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シリーズ第2弾「誤りありますか、解釈するか、訂正するか」、全20回を、次回から開始します

Posted on 2010年12月28日

 前回までの両義性シリーズに続く、第2弾「誤りありますか、解釈するか、訂正するか」全20回を、次回から開始しますので、よろしくお願い申し上げます。
 今回は、今度のシリーズをご説明しますと、誤りありますか、即ち「誤りがあれば、訂正しなさい」が、2通りの回答に繋がり、A:誤りなし、解釈する、または、B:訂正する 誤 → 正、解釈もする、の二者から、一方を選択して頂くのです。
 具体例を、お示ししましょう。例文XとYについて、「誤りありますか、解釈するか、訂正するか」を考えることにするのです。

X: Everyone wishes the data were true.
誤りなし、だれもがその資料が真実であればなあと願っている。
Y: Everyone wishes the data was true.
was → were、だれもがその資料が真実であればなあと願っている。

動詞wishの内容を表すthat節では、仮定法が用いられ、意味的に仮定法過去とも考えられ、dataは複数であることから、wereが誤りなく、wasはwereに訂正されることから、XとYは、それぞれ、直後の回答が解答なのです。尚、dataは単数にも使われると、名古屋駅前の予備校講師など、間髪入れず、ご指摘なさりそうですが、dataを単数とすれば、YもXの直後が解答になりますけれども、次回からの20問にはこのような解答になるものは除いてあります。ただし、誤りなしでも、訂正することが可能なことはあり、これを書き換えると言うのでしょうけれども、訂正の回答になった場合、問題の英文自体が誤りなしかどうか、(再)確認をすべきでしょう。
 次回は、次の(1)で、誤りありますか、即ち「誤りがあれば、訂正しなさい」が、2通りの回答に繋がり、A:誤りなし、解釈する、または、B:訂正する 誤 → 正、解釈もする、の二者から、一方を選択して、ご回答下さい。
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両義性が、否定の二種類は、宜しいのですけれど、…

Posted on 2010年12月13日

 今回の(20)は、前回(19)以上に異論の余地が大きく、両義性と併せて考察いたしましょう。
(20)I cannot do anything.
 まず、英語not (...) any...は、日本語「何も…ない」に相当するという知識から、Aの解釈が思い浮かびます。
A: 私は、何もできない。
当然、Aの否定は、全くないということで、全(部)否定ですね。これは、否定でも基本的な事項で、Aは、全(部)否定でも、典型的な全(部)否定と言えるでしょう。
 ところが、とある英文法の参考書には、次のBの解釈も併記され、(20)が両義的であると記されているのです。
B: 私は、何でもできる訳ではない。
しかも、Aの全(部)否定の解釈に対して、Bの「何でも…という訳ではない」という部分否定の解釈で、Aが「100%…ない」に対して、Bが「100%…ではない」であると、否定二種類の対比としては、お見事ですらあります。
 真実は、単純明快が多いのでしょうが、逆に泥臭い場合も少なくないでしょう。二種類の否定を対照させるには、上記の両義性は最適であるかもしれませんけども、(20)がBの部分否定に解釈されるのは、通例というよりは、異例、それもかなり異例でしょう。(20)がBのように解釈される実例が、あるのかどうかに注目しつつ、他で説明されているのか、見守っている段階なのです。
 尚、(20)には、Bの解釈の他にも、cannotをcan’tではなく、can notと2語で綴られるのかどうかことも絡んでおり、こちらはcan notに関する辞書の記載は見かけるものの、実例を見かけたのが何時だったのか、記憶にございません。
 両義性シリーズは、今回で完結です。次回からは、「誤りありますか、解釈するか、訂正するか」①-⑳を開始し、次回はその導入回で、このシリーズの趣旨をご説明します、ご期待下さい。

受験英語で花形構文は、実はit強調構文

Posted on 2010年12月1日

 今回の(19)The minister didn’t talk until noon.は、aの対応するit強調構文の方が、受験英語なりには、よく登場するでしょうか。
a. It was not until noon that the minister talked.
受験英語に従えば、即ち、「not とthatの間のものが指す時になったはじめて、that以下になる」という「公式」から、aの方は、次のAの解釈になります。
A: 大臣は正午に話し始めた。
「大臣は正午まで話さなかった」から、意味的に同義で、Aの解釈になるのです。
 では、両義性の他方は、何なのでしょうか。今度は、「大臣は正午になって話さなくなった」という意味で、Bの解釈が考えられるのです
B: 大臣は正午前に話をやめた。
Aでは、until noonが否定辞notの内側にあるのに対して、Bでは、逆に、until noonが否定辞notの外側にあると考えられます。
 ただし、この(19)は、これまでの18個と異なり、Bの方の解釈が可能なのか、勢い、両義性が成り立つのかと、疑問が呈されたことがあります。私見では、AばかりでなくBの解釈も、可能性possibilityがあるものの、Aに比べBの方が蓋然性probabilityが高くないのでしょう。
 次回は、次の(20)で、今回以上に異論の余地が大きく、両義性と併せてご考察下さいますよう。
(20)I cannot do anything.

(人称)代名詞の指示が両(多)義的

Posted on 2010年11月22日

今回の(18)Tom hit Bob, and John hit him.において、両義性に係わるのが、最後の(人称)代名詞himの指示であることは、わかり易いでしょう。更に、前の文から、後の文への流れから、後のhimの指示が、前の文のBobか、Tomであることも難しくはないでしょうし、それぞれ、AとBの解釈になるでしょう。
A:TomはBobをなぐり、その後JohnはBobをなぐった。
B:TomはBobをなぐり、その後JohnはTomをなぐった。
(18)の接続詞andが、時の経過もしくは因果関係に係わることが、十二分に考えられ、通例、第一義的に、(18)は、上記AとBの解釈が可能で、両義的と考えて差支えないでしょう。
ここで、第一義的解釈に限らない、異例にしても可能な解釈全般を考えておきましょう。今は昔ですが、Chomskyの束縛理論Bが思い出されまして、「統率範疇において、代名詞類は束縛されない」から、当該のhimは、主語のJohn以外のすべての男性を指示することが可能で、両義的どころか多義的なのです。尚、主語のJohnが指示される場合は、him→himselfとなり、これこそが、束縛理論A「統率範疇において、照応詞は束縛される」の典型的な事例になっています。
 次回は、次の(19)で、今までの18個と異なり、異論の余地があり、両義性を解決されましたら、この異論の余地も、ご考察下さい。

(19)The minister didn’t talk until noon.

主要部の決定が、両義的

Posted on 2010年11月17日

 今回の(17)The poor boy broke a carton of bottles.では、まず、話者の心中を表す形容詞poorを解釈して、それから、主要部の決定が係わる両義性を考えましょう。まず、poorですけれども、インターネット上で2つの英和辞典を検索に使えるサイトで、一方では8項目中7つ目、他方では8項目中6つ目と、かなり後に記載されている意義で、「かわいそうな」が該当し、「かわいそうにも」のように副詞的に解釈するのがコツでしょうか。
 そして、主要部の決定が関連する箇所は、(17)の目的語であるa carton of bottlesと考えられます。「文の主要部は、動詞(句)である」と言った場合の主要部は、やや異例で、主要部は、通例、名詞ですから、主要部候補は、cartonとbottlesで、これら両方が主要部になり得て、この決定から両義性が生じるのです。換言しますと、brokeの対象が、(i)cartonである場合と、(ii)bottlesである場合とがあり、それぞれが、AとBの解釈に、対応します。
A:かわいそうにも、その少年は、ビンが入った箱を壊した。(下線部の箱が主要部)
B:かわいそうにも、その少年は、1箱分のビンを壊した。(下線部のビンが主要部)
質問好きの方がいらして、Aの方の解釈で、「箱を壊して、ビンを壊さない」ことはあり得るのかとご質問を受けたことがありますけども、(2)Confidentially, did you like this textbook?で、聞き手の答え方と、話し手の尋ね方と、両義的ですけれども、この場合同様、両義的とは、両方同時を制限しないのではないでしょうか。
 次回は、次の(18)で、両義性は無論のこと、解釈の可能性までもご考察下さい。
(18)Tom hit Bob, and John hit him.