言語情報ブログ 語学教育を考える

2.日本の講義

Posted on 2010年12月25日

日本でもたくさんの大学がインターネット上に講義・講演を公開している。が,しかし,たいへんに探しにくい。見つけ方のヒントがなかなかわからない。見つかっても画像が出ないで声だけだったり,画面がボケていたり,やたらと見えなくなったり,声がしょっちゅう止まったり,素人の撮影で暗かったり,聞きにくかったりで,苦労する。どうも大学はことばで勝負するのではなく,ちょっと格好だけ出す,大学の講義の雰囲気を伝えればいいとでも思っているのだろうか。

アクセス数が100回以下の講演・講義が多い。東大ですら200回以下の講義が多い。何のための公開かわからない講義も多い。公開するなら受験生が見て,あー,この先生に習いたいと思うような企画と演出にすべきだ。紹介,言いわけ,機器の不具合のいじくりなど,など。お弟子さんの前講義が延々と続き,本命の先生がなかなか登場しなかったりで,疲れる。総長講演が何か内輪の話で,最初は内容がわからなかったりする場合もあった。

そんな中で,東大のノーベル賞学者である小柴昌俊氏の講義は光る。「素粒子と宇宙」というタイトルのもと,ご自分の1964年の最初の講義から,「ニュートリノ」を巡る世界の天才たちとのせめぎ合い,氏の「スーパーカミオカンデ」の成果など,手に汗を握る講義の中で,先生がときどき何気なく発する感想にはっとする。話し方もたいへん魅力的だ。

京都大学の長尾 真氏の講演・インタビューもおもしろい。「永遠のフロンティア ― 人間を見つめた情報学」と題して,まさに長尾先生のフロンティア魂の研究歴が聞ける。

長尾先生はいち早くコンピュータに注目したが,機械的な計算をさせるだけではおもしろくなく,灰色の場合,すっきりしない人間の思考過程の解明,似てるかもといった不明確な認識などに注目して,「画像認識」に関して世界が注目する成果を上げたが,だんだんやる人が多くなると,転換して,翻訳や意味の問題に向かうといったすごさである。常に未知の,他人がやらない世界を究明したいという氏の姿勢は驚くべきものだが,穏やかな,微笑みを浮かべた態度にだれでも惹かれてしまうだろう。

もちろん若い先生の授業にも光るものが多い。ぜひいろいろな大学を訪問して,輝く講義・講演を見つけたい。
(村田 年)

Comments (0) Trackbacks (0)

Sorry, the comment form is closed at this time.

Trackbacks are disabled.