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「誤りありますか、解釈するか、訂正するか」④:

Posted on 2011年1月21日

(4) This pond is deepest at this point. (誤りがあれば、訂正しなさい)
 この問題は、誤りか否かに係わりそうな場所が、主語this pondでも、動詞isでも、副詞句at this pointでも、なさそうであることは、宜しいですね。つまり、補語の部分であるdeepestが、この問題のポイントになる箇所なのです。
 ここで、deepestは、deepの最上級で、冠詞が問題になりますね。冠詞として可能性では、まず不定冠詞a(n)が伴われて、a deepestとなることは、a deepest pond (one)でもない限り、不可能で、定冠詞が伴われるthe deepestと、不定冠詞も定冠詞も伴われない「無冠詞」である単なるdeepestとは、両方とも可能です。それで、解答は、④になります。

④ 誤りなし、 この池は、この地点が最も深い。

解答④は、結果としては一つですが、辿り着き方に二つはありそうで、その二つとは、副詞の最上級と定冠詞の有無と平行的です。Carl runs (the) fastest of all the runners.等における副詞の最上級は、定冠詞が伴われる場合と定冠詞が伴われない場合とがあり、日本の英語教育では、前者が新で、後者が旧であり、境目のきっかけは、1981年からの中学校英語週3時間と無関係ではありません。1981年以前は、Car runs fastest of all the runners.のみが正解で、Carl runs the fastest of all the runners.の方が不正解で、この不正解→この正解、という誤文訂正の文法問題をご記憶の方も少なくないことでしょう。1981年からNew Horizon(東京書籍)を手始めに、Carl runs the fastest of all the runners.のみが学校文法で教えられるようになり、Car runs fastest of all the runners.の方が「破格」になったのです。Car runs fastest of all the runners.の旧時代には、(4)は、副詞の最上級と同様に、冠詞が伴われないと教えられ、Carl runs the fastest of all the runners.の新時代には、(4)は、唯一例外的に、冠詞が伴われないと教えられていることでしょう。
 では、(4)とともに、可能であることが確認されたThis pond is the deepest at this pointという定冠詞付きの最上級は、どう説明されるべきなのでしょうか。1981年の前: runs fastest/deepest、1981年以降: runs the fastest/deepest、現在: runs the fastest/the deepestのように推移しているのではなく、副詞の最上級に定冠詞も、同一物内での比較による形容詞の最上級も、定冠詞の有無は両方とも可能で、runs (the) fastest/(the) deepestが実態であり、英語において最上級にはすべて定冠詞を付けることが可能なのです、これは付けないのと選択的に両方可能であることも多く、最上級には必ず定冠詞を伴わなければならないフランス語等と、同方向ながら、対照的なのです。

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