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「英語教育批評」(その64)(センター入試の問題)

Posted on 2013年1月31日

(1)センター試験の問題を論じるには、少なくても、① 出題される問題の適否 ② 制度としての諸問題という2つの視点が必要だと思います。今回は、 ① について考えることにします。対象とする問題は追試などではなく、最初に実施されたものとします。

 

(2)第1問 A は、下線を引いた1文字が、同じ音を表すか否かを判断するものです。① generate ② genius ③ medium ④ meter では、もちろん① を選べば正解になるわけですが、私は、中高の英語の授業で、こうした観点からどういう指導がされているのかが気になりました。

 

(3)日本の敗戦の直前(1943)でしたが、私は旧制中学に入学する前に「アルファベット」を覚えて得意になっていました。しかし、「S(エス)」と覚えた文字が、”say” にしろ、”speak” にしろ、「エス」とは言わないことを不思議に思ったのでした。英語の先生は、「文字の呼び方と、単語の中での読み方は違うのだよ」と答えてくれましたが、納得は出来ませんでした。国語の先生が、「私…と言う時の“は”は、“わ”という音になる」と言われた時には、文字と実際の発音は違うということは分かりましたが、もやもやした気持ちが残ったのは同じでした。

 

(4)「“字母”は前後関係で発音が変わる」わけですが、問2の、① basic ② insurance ③ serious ④ symbol のうち、② を選ばせるものなどは、あまり意味がないと私は考えます。高校での授業の際に、”insurance” という単語が出てきたら、まず正しい発音を真似させて、意味を確認することが主眼であってよいと思います。”s” という文字がどう発音されるかを考えさせるのは、生徒の学習負担を増すだけの些細な問題だからです。

 

(5)「アクセントの問題」では、入試センターは、「音節」という用語を避けて、「第一アクセント(第一強勢)の位置が他と異なるものを選べ」としていますが、教室の指導では、「音節」という用語を使用している場合が多いと思います。しかし、英語の場合の「音節」という概念は、日本人には結構分かりにくいものです。センター入試では、「話すこと(speaking)」の試験ができないので、“発音に関するペーパーテスト”を出題するのでしょうが、私は止めるべきだと思います。

 

(6)作文力を試す問題では、第2問の問4は次のような会話文です。

Eric’s friends, Minoru and Sachiko, will be here at seven this evening. He (空所)doing his homework by then.

① has been finished ② has finished ③ will have finished ④ would finish

これなどは、「未来完了形」を無理に使わせる問題で、受験生に無駄な負担を課すための悪問だと思います。私の考えでは、“未来完了形”は、読む教材の中で出てきたら、意味が分かればよい程度の文法事項です。英文法の参考書は複雑な使用条件を示していますが、その1つには、「未来形で代用出来る場合がある」とあります。

 

(7)第3問は、会話の中で使われている “to call the shots” の意味を問うものですが、その選択肢は、① ask questions ② avoid trouble ③ have control ④ make friends です。私が受験生ならば、”to call the shots”(指揮をとる) の意味を知らなくても選択肢から消去法で正解を選べたであろうと思います。入試センターは、何故こういう出題の素材を「会話」にするのでしょうか。文科省の「コミュニケーション重視の話せる英語教育」の方針に迎合するためとしか思えません。「実用的な即効性」を求めるだけでは日本の英語教育は効果ないと思います。(この回終り)

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