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「英語教育批評」(その74)(“英語教育環境”の再考)

Posted on 2013年7月12日

「カタカナ語の活用とその弊害」再考

(1)私は持論として、“カタカナ語の氾濫”とか、“妙な英語混じりの歌”などが、英語学習環境を破壊していると主張してきました。しかしながら、そういう要因を法律で禁止することは不可能でしょうし、そんなことをしたならば、弊害のほうが大きいであろうと想像することも出来ます。

 

(2)そういう要因を逆に利用しようとする試みもあったのです。例えば、脇山 怜『和製英語から英語を学ぶ』(新潮社、1985)という本がありました。著者は長年 “Japan Times” の記者でしたが、この本では、新聞のような堅苦しい文体ではなく、ある家庭の親子や夫婦を設定して、その会話の中から和製英語をどのように言い換えたなら英語として通じるかを示してくれています。現在でもよく使われる“イメージチェンジ”(“イメチェン”とも)、“オープン戦”、“エンスト”、“カンニング”など500項目以上を解説してあります。

 

(3)カタカナは外来語を表記するには便利ですから、排除することだけを考えるのではなく、節度を持って利用していけば、英語学習者を指導する場合でも役に立つことは確かでしょう。教室では生徒のよく知っている芸能人の話などにかこつけて、正しい英語の言い方を紹介すれば、英語嫌いの生徒も興味を示してくれる可能性があります。

 

(4)例えば、“カンニング竹山”という芸能人がいます。私も彼の芸名の由来は知りませんが, 一時は、“すぐに切れて怒鳴る芸能人”として有名でしたが、俳優や雑誌のコラムニストとしても活躍していますから、多彩な能力の持ち主で、努力家でもあるのでしょう。TBSのラジオでは、政治問題もコメントをしていたことがあります。この芸名から、“カンニング”はそのまま英語にすると“cunning” で、“ずる賢い”という意味しかないことから、“cheating”という英語を教えることが出来るはずです。

 

(5)その“カンニング竹山”がある番組で、「自分は酒が大好きで毎晩飲み過ぎるので、翌朝は何キロかランニングをして、時間のある時はサウナへ行って汗を流す」と語っていました。その番組は、専門医たちによる芸能人たちの健康診断をする番組でしたから、カンニング竹山は、「すぐに止めないと命を落とす」と“ドクターストップ”をかけられてしまいました(もっとも、これはテレビ番組制作者による“やらせ番組”のように私は感じました)。ある意味で、芸能人たちは命がけで芸を売っているのです。そんな番組が多いことは視聴者も反省しなければならないと思います。

 

(6)英語嫌いの生徒でも関心を持ちそうな話題で毎時間1つでも、英語を教えるとすると、生徒はすぐに「それはテストに出ますか?」といった質問をするものです。私ならば、「テストとは関係ないよ」と答えたいですが、その判断は、日頃の指導方針と関係がありますから、一概には言えないと思います。

 

(7)最後に、脇山 怜氏の示している英語を記しておきます(ただし要約)。① “イメージチェンジをする”文字通りには、 “to change my image” ですが、髪型を変えたりする場合は、“I had a haircut just for a change.”などが良い。② “オープン戦”は、プロ野球で正式なリーグ戦が始まる前の“練習試合”のことですが、英語では、“an exhibition game”。③ “エンスト”は、たまに “My car’s engine stopped.” と言う人もいますが、“My car’s engine stalled/ died.” などが普通。

 

(8)言葉は複雑で、一筋縄ではいきません。英語教師は常に視野を広くして、様々な情報を身につけるように努力しなければなりません。その上で、「教え方」も学ばなければいけないという大変な職業であることを自覚しなければならないのです。(この回終り)

 

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