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日英ことばのエッセー(その14)(カタカナ語の乱用)

Posted on 2014年10月7日

(1)今年の9月末には、文科省が日本人の日常語の理解度や誤用例を公表しました。例えば、“世間ずれをした人”は、本来は、“世間の荒波にもまれてずる賢くなった人”を意味したのに、現在の特に若い世代の人たちの多くは、“世間のことをよく知っている人”の意味だと考えているとのことです。これから具体的な対策を考えるようですが、国語教育を改革するのは大変なことだと私は思います。

 

(2)英語教育ですと、「役にも立たない英語を6年以上も教えているからだ」と世間の批判がすぐに集約されてしまうのです。その結果の対策としては、“小学校の英語教育を早めよう”とか、“もっと英会話を教えよう”いうことになります。これでは、日本の教育問題は混乱するばかりで、成果など全く期待できないことになるでしょう。

 

(3)解決策を探る前に、現状をもう少し論じてみたいと思います。大きな問題の1つは、“カタカナ語の乱用”です。次の例は、日常のテレビ番組の中で使われていたカタカナ語を集めたものです。番組には国会中継もありましたから政治家たちの使用例も含まれています。

 

(4)国会での質問の1つに、「アメリカとの交渉は“オンザロック状態”ではないのか?」というのがありました。“行き詰まっている”と言えばいいのです。ちなみに、“船が暗礁に乗り上げた”は、The ship hit the rocks.(船は座礁した)のように複数形になります。“オンザロック”は、英語では、”I drink whisky or tequila on the rocks” (私はウイスキーやテキーラはロックで飲む)と言うのが普通です。この質問者は、“行き詰まる”の英語 ”come to a deadlock” をうろ覚えで“オンザロック”と言ったのかも知れません。

 

(5)「それでは収入は、“トリプルダウン”してしまうではないですか?」という例もありました。「収入が三倍下がってしまう」と言えばいいのにと思いました。野球の好きな人なら、“トリプルプレー”は分かります。“三重殺”という訳語はありますが、あまり使われません。スポーツ紙の見出しには時に見かけます。

 

(6)大臣の答弁に、「様々なアプローチを取る必要がある」というのがありました。アプローチ(approach)も広辞苑に載っていますが、テレビのニュースを聞きながら、すぐに広辞苑で調べる視聴者は何人いるでしょうか?「様々な方法を実行する必要がある」のほうがはるかに分かりやすいはずです。

 

(7)「放火犯は早く捕まえないと、ますますエスカレートするだろう」というのもありましたが、“エスカレーター”は馴染みがあっても、英語の動詞としての、escalate を意識する人はどのくらいいるでしょうか?「何となく分かる」という人は多いとしたら、国語の授業では用語の定義をきちんと教えていないと言うことになります。

 

(8)“シミュレーションしておく必要がある”というのもありました。この語も広辞苑にはありますが、定義はなかなか厄介です。遊園地などでは、“疑似体験”の出来る “シミュレーションゲーム”などがありますから、感覚的に分かる人はいるでしょう。でも言葉は、「何となく分かる」では困るのです。

 

(9)以上のような悪例を使わないようにするにはどうすればいいでしょうか?法律で決めても効果は無いでしょう。学校教育の場で、正しい表現と間違った表現の区別を学年に応じて、じっくりと教えていくよりないと私は思います。「英語が話せる人は格好いい」とか、「英語さえ知っていれば世界中どこにでも行ける」といった先入観を排除するためにも“時間をかけて教え込む”より無いと私は考えています。(この回終り)

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