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「『英語教育』誌(大修館書店)批評」(その17)(「質的研究」のすすめ)

Posted on 2015年1月21日

(1)『英語教育』誌の2015 年2月号の特集の第1は、「生徒・授業を変える『質的研究』のすすめ」です。私は正直なところ、“質的研究”という用語が、英語教育関係で使われていることを知りませんでした。特集の扉ページには、次のような説明があります。「『質的研究』では、参加者の視点で研究者自身が内省的な考察を行うことにより、データに基づいて現象の新たな側面を見いだしたり、新たな理論を生み出します」(部分引用)。

 

(2)上のように言われても、よく分からなかったのですが、私自身は新しい事を学ぶ意欲はまだ衰えていませんので、勉強するつもりで記事を読ませてもらいました。特に本誌19ページには、吉田 達弘(兵庫教育大)「質的研究理解のためのブックガイド」が掲載されていて、英語教育との関係を知るのに便利でした。こういう情報は最初に掲載してもらえるとなお良かったのですが。

 

(3)私は新しい多くの文献を読む余裕が今はありませんが、以前に心理学関係の本を読んだ時に、“質的研究”といった用語を見た記憶がぼんやりと浮かんできました。広辞苑にも、“質的研究”という用語の説明がありますが、社会学の問題としてのもので、すぐに英語教育に結びつくものではありません。とにかく中・高の教員は忙しいですから、「質的研究で生徒・授業を変えられます」と言われても、すぐに始められるほどの余裕が無いのが一般的ではないでしょうか?

 

(4)日本で唯一とされる『英語教育』誌の宣伝としても、「こんな難しいことを知らないと教員として失格なのか」という印象を与えるのは避けた方がいいと私は思いました。第2特集は、「生徒と教師のための新学期準備チェックリスト1」で、これは今後の号にも続くようですが、この特集のほうが日常の授業と結びつきやすいので、先に出すべきだったと思いました。

 

(5)“日頃の授業と結びつきやすい”と言えば、『英語教育』には、すぐに役立つ記事が沢山あるのです。例えば、「入試の悪問から学ぶ文法指導のヒント」(p. 48~)とか、「Q&A:より良いテストの作り方・使いかた」(p. 62~)などもあります。理論的な勉強もしたいと希望する人もいることでしょう。この号では、「<複雑系>で英語学習観が変わる―SLA の最新理論から―第5回」」という記事もあります。

 

(6)このように、『英語教育』誌は、特集とは関係がなくても、英語教員には欠かせない貴重な情報源なのです。最初から難解な課題を見せて、買って読んでみようかと思う読者を尻ごみさせてしまうのは、宣伝としても賛成出来ません。そうでなくても、“活字離れ”“図書館離れ”“本屋の消滅”などが社会問題化しているのです。『英語教育』誌の益々の発展を祈ること切なるものがあることを訴えて、今回の結びのことばとします。(この回終り)

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