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日本語における「主語省略」の問題(1)

Posted on 2015年2月10日

●日本語の文法、英語の文法を知ることは力になる

 

「日本語ではよく主語が省略される」とか「日本語は省略が多くて曖昧だ」などとしばしば言われる。

 

私は若いときにこの点が気になり、レポートを書いたりした。高専に就職し、研究論文が義務づけられて、まず最初にこの「省略の問題」を扱ってみた。その結果、大きな反応があり、『英語教育』誌に取り上げて頂いたり、郵便でのコメントをたくさん頂いたりした。その後も何年も経っても院生・教師の方々からお手紙を頂いたりした。

 

それから50年近くの間、ときどき考え直したりしてきた。それほど徹底的に考察したわけではないが、ずっと気になっていた。そんなわけで、省略の問題、特に主語省略、ほかの言語の主語省略、なぜ主語省略が許されるのか、もともと日本語には主語はないのではないか、こういった問題をやさしく説明できないかと考えた。

 

この雑文のエッセイも100号を超えて、このへんで初めて文法の問題を取り上げることにした。私は、基本的な学習文法の習得こそ日本人が日本語で自分の意見を発表し、文章で相手を納得させる方法をつかむために有効だと思っている。

 

また、今、日本人の英語習得についていろいろな意見が出ているが、ただ単に英語の練習を続ければ、英語はやがてできるようになるとは思っていない。英語はどんな言語で、日本語とはどこが違うかを学び、われわれの弱点を文法面からカバーして、その面を特に訓練することによって、英語が使える日本人になれると考えている。

 

そのような観点から、「省略の問題」を取り上げて、日本語と英語の違い、世界の言語の中での英語および日本語の位置などにも少し言及しながら、日本語の特徴を浮かび上がらせることができればと願っている。

 

(つづく)

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