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「『英語教育誌』誌(大修館書店)批評」(その22)(英語教師のためのおすすめ本100冊+(プラス))

Posted on 2015年9月7日

(1)「英語教育」誌2015年8月号の特集①は、「英語教師のためのおすすめ本100冊」です。私が中学校に勤めていた40年ほど前は、同じ学校の先輩や同僚から、「この本面白いから読んだほうがいいよ」といったことをよく言われたものです。

 

(2)今日では、「同僚同士でも、あまり話し合いたがらない」といったことを耳にしますから、「英語教育」誌で、わざわざ特集を組んだのかと、勘ぐりたくなりますが、雑誌の特集でも、それを題材に、“話し合いをする”ならば、結構なことだと思います。

 

(3)今回の特集では、最初に「現場でシェアしたい教育書」と題する座談会を掲載しています。「誌上大放談」とも題していますが、それほど大袈裟なものではないと思います。 その座談会では、ある発言者が、若林俊輔先生に大きな影響を受けたことを述べています。私は、若林氏とは、よく酒を飲みながら議論をした仲なので、彼が話題になると、どうしても主観的になりがちです。

 

(4)若林氏の指摘はなかなか鋭くて、影響を受けた教え子も少なくないであろうことはよく分かります。ただし、私は彼と全て同意見だったのではなく、教材内容については、意見を異にする点が多くありました。

 

(5)教え子としては、強烈な個性のある恩師を超えることは難しいでしょうが、1つの見解だけを同僚などに伝えるのではなく、もっと視野の広い見方も伝えるべきだと私は思います。故人になられた若林氏は、もう反論は出来ないのですから、ここではこれ以上論じることは止めますが、“教え子”としては、恩師の教えたことだけを伝えるのではなく、それぞれ異なった教師の特徴を仲間に伝えるように努力すべきだと私は考えます。

 

(6)この特集には、「心が疲れたときに読みたい本―生徒や自分の心を感じてみる」という内田 利広氏(京都教育大)の一文があります。この題名は私にはよく分かりません。「どうして心が疲れたとき」なのでしょうか?心が疲れているときは、あまり良い考えは浮かばないと思いますが。「やる気のない生徒の気持ちを推測してみよう」と言うほうがずっと分かりやすいのではないでしょうか?

 

(6)次に江藤 裕之(東北大)の「英語の知識をさらに深める本―「さすが先生」と思わせるプロの秘密の道具」という長い題の文があります。要するに、「語源のことなど英語の文化史に関わる知識を生徒に話してやること」を述べているのですが、この場合も、「生徒の実力をよく考えて、必要に応じて」という注意が必要でしょう。「先生はこんなことを知っているのだぞ」といった態度では、生徒はついて来ないでしょう。そういう配慮にも言及して欲しかったと思います。

 

(7)その他の記事としては、タイトルだけを示しますが、私としては、同意出来る点も出来ない点もあります。「教師の英語力アップに役立つ本」「英語力アップ」のような日本語を多用する教師を私はあまり信用しません。他には、「異文化理解・背景的知識を補強する定番書―教室の外につながる10冊」という長い題の文章もあります。「定番」と言うと、「いや私は別の本を推したい」という意見も出ることでしょう。

 

(8)「生徒に多読をススメたい!本コンシェルジェのテクニック」というのもありますが、用語の使い方から見ても、一人よがりの傾向が感じられます。最近の日本語の乱れは、ひどいものがあって、拙宅のマンションでも、女性事務職員のことを「コンシェルジュ」と呼んでいます。中学生や高校生に、何語か分からない言語をやたらと多用することは慎みたいと思うのは、私だけでしょうか?

 

(9)本号の第2特集は、「小学校での音と文字の指導を考える」です。小学校での英語教育については、これまでも、いろいろな議論がなされてきました。私としては、反対論のほうに軍配をあげたくなるのですが、いずれにしても、あせらずに十分な時間をかける姿勢が大切だと思います。A,B,Cが書けても、発音が、エ―や、シーになるのでは、意味がありません。あせらずに、ゆっくりと、時間をかける方針を強調して欲しいと思います。

(この号終わり)

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