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浅野:英語教育批評:「トマティスメソッド」のこと

Posted on 2007年11月26日

 11月24日(土)の関東甲信越英語教育学会の月例研究会(於お茶の水女子大附属高校)では、三好洋子氏(元関東国際高校)による「聴覚トレーニングの成果—SELHI高校4年間の研究」という発表があった。特殊な機器を使って訓練すると、発音がうまくなり、その効果は音読や聴解力などにも顕著に現れるという報告であった。その方法が「トマティスメソッド」である。詳しくは説明できないので、下記(注)にあるセンターにお問い合わせいただきたい。無料体験もできるとのこと。
 この方法論の創始者アルフレッド・トマティス博士によると、仏語、英語、日本語など個別言語は、それぞれ用いている「周波数」に差があるので、日本人は、英語を話すときでも、日本語の「周波数」に影響されて“英語らしく”発音できないし、「聞く力」も伸びないとのこと。そこで、自分の音読の声を英語の周波数に合わせた音にしてヘッドセットから耳に戻してやると、次第に“英語らしく”なっていく。これは今回の参加者も実際にやってみて、実感した効果である。
 中津遼子『なんで英語やるの』(文春文庫、1978)が、日本の英語教育の根本的な問題を提起して話題になった。中津氏は、数多くのゼミを開催して、まず日本人の発音を呼吸方法から改善させることをやらせてきた。しかし、その影響はごく一部に限られたように思う。
 小学校の英語教育に関しては、「学習者が若いほど発音がうまくなる」という主張に対して、「発音だけうまくなっても意味がない」といった不毛の議論が繰り返されている。比較的短期間で、しかも、高校生からでも効果があるなら、実践したらよいと思う。文科省も、SELHi で実験させるならば、その成果を一般化する努力をしてもらいたい。問題は予算であろう。教育改革には金もかけなければ駄目なのだと思う。
(浅野 博)

(注)問い合せ先:トマティスセンター(03-5216-4331)/ ホームページ:

http://www.tomatis-japan.com