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浅野:英語教育批評:「英語のやり直し」のこと

Posted on 2008年11月5日

 就職をしてから「英語をもっと勉強しておけばよかった」と言うのは昔からあったことだ。今日でも「再学習」を希望する人が多いのは英語であろう。IT 関係の知識や技術は大学で習ったことなど役に立たないが、「数学的な考え方」とか「物理的なものの見方」などが身についている人とそうでない人とでは学習効果に大きな差ができる。やはり基礎がものを言うのだ。英語の再学習について既刊の書物から問題点を探ってみよう。
(1)矢野安剛『やり直しの英語上達法』(NHKブックス、1992)
この書物はまず英語学習の心構えを説いている。いずれも大事な指摘だ。例えば、「英語上達の三悪人」という章では、「完璧主義」「自意識過剰」「英米人コンプレックス」を三悪として、その対処法を説いている。しかし、「間違いを恐れずに話せ」などは、教室では言われても、入試対策としては排除されるし、「文法をきちんと学んで、正しい英語を使わせるべきだ」との見解もある。学習者としては、迷うばかりだ。そういう矛盾にもメスをいれてほしい。
(2)岡本行正『子供たたちに英語の原書まで—公文式英語教育の方法』(くもん出版、1992)
 公文式は数学教育で知られたが、その方法論には賛否両論がある。しかし、基礎的なことから積み上げる指導方法には学ぶべきことがある。今日のように「英語を話せるように」という声が大きい中では、「子どもが原書まで読める」というのは考えてよいことだ。もちろん文法だけ、読むことだけといった片寄りのある主張ではない。特に小学校、中学校の英語教員に読んでもらって、教え方の反省に役立ててもらいたい。
(3)茅ヶ崎式英語会『0からのスタート 再学習の英語(前篇)』(茅ヶ崎出版、2008)
 茅ヶ崎方式で知られる著者たち5人による教材である。岡本太郎、本田宗一郎、手塚治虫などの有名人を英語で紹介するのに何をどう言えばよいかの見本を示し、練習問題や発音と構文の解説などから成っている。英文は中学3年生程度なので、再学習する社会人にもとっつきやすい。英語学習の初歩的教材の在り方にも示唆することが少なくないと思う。
(浅 野 博)