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浅野:英語教育批評:「指導法」を考える

Posted on 2006年11月20日

 毎日の授業を担当する教師にとって、指導法は大事だ。したがって、指導理論を説く書物は多い。一方、先達の実践的な学習方法を紹介したものも結構ある。本当はこの両者を合わせたものが欲しいと思っていたのだが、竹内理『より良い外国語学習法を求めて——外国語学習成功者の研究』(松柏社、2003)は、そういう試みをした異色のものと思う。
 最近は認知心理学に基づく学習論も盛んだが、なにしろ難解である。それまでの、行動心理学に基づく「刺激—反応説」は観察できる行動の変容を学習の成立としたので比較的わかりやすかった。しかし、この考え方はチョムスキーによって批判されて、姿を消してしまった。英語教師の中にも、「暗記や文型練習はダメです。これからは創造的な活動をさせるべきです」と極論を言う人がいた。著者の竹内氏は、英語学習成功者の多くが「暗記と反復練習」を強調していることに着目して、そこに新しい理論的根拠を求めようとしているところがある(pp.180−182)。反復練習は継続的にやらないと効果はないので、教室の指導には限界があることも知っておくべきであろう。
 『ロボット化する子どもたち』(大修館書店、2005)は、人工知能を持ったロボットにさらに何をどうやって教えるか、それと自閉症の子どもにどう学習させるかという2つ視点から、「学び」の認知科学をわかりやすく説いていいて、これも異色の書物だ。例えば、(1)微分積分の複雑な計算が即座にできる、(2)100円を持って近所の駄菓子屋でお菓子を買ってくることができる、という2種類のロボットでは、(2)を作るほうがはるかに難しいらしい。教師は不用意に「これは易しい、これは難しい」と思い込んではいけないのだ。
(浅 野 博)

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