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浅野:英語教育批評:“授業以前”のこと

Posted on 2007年5月15日

 国会での最低賃金などの議論を聞いていると、政府・与党の姿勢として、「働く意欲のない者を国が援助をすることはない」という姿勢が読み取れる。これは何も今に始まった考え方ではなく、昔から「働かざる者食うべからず」と言われてきた。最近では「働く気がない人に税金を使うなんて」というタイトルの記事が週刊誌に出ていた。野党もそう考えているであろう。ただし、「働くことのできない人たち」への配慮にはかなり違いがあるように思える。いずれにしても、教師の立場からは、政治家は気楽なものだと言いたくなる。なぜなら、学校の教師が「勉強する意欲のない者は学校へ来るな」などと言ったら世間から猛烈な非難を受けるであろう。つまり、教師は学ぶ意欲のない生徒には学ぶ意欲が湧くようにしむけるのが当然だと思われている。 
 「英語教育」(大修館書店、2007年1月号)の「菅先生に聞こう!授業の悩み Q & A(第22回)」では、“授業以前の生徒”(勉強などする意欲のない問題の生徒)のいるクラスでの対応の仕方をいくつか提案しているが、すぐに授業に入れない生徒は生活習慣が身についていないことを指摘している。国立教育政策研究所の調査によると、「朝食をとる生徒」や「学校へ持参すべきものを事前に確認する生徒」は、そうでない生徒よりも全体的に学力が高いとのこと。生活習慣というのは、就学前から家庭でしつけなければなかなか身につかないものだが、遠足とか給食とかの場面は、学校としての責任を果たす機会でもある。でも、遠足に弁当を持たせないとか、給食費を払わないといった“しつけ以前”の親の問題があるのが現在の社会だ。
 菅正隆氏は「授業内の活動にも時間制限を設けるなど、メリハリのあるものにする」ことを提案している。これは当たり前のようで、大事な指摘だと思う。毎日の授業を同じような方法で繰り返していると、ついマンネリ化してしまう。「メリハリをつける」というのは、教師自身にとって大切な要件だ。まずできることから始めたい。
(浅野 博)

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