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浅野:英語教育批評:「4技能+アルファ」のこと

Posted on 2008年3月18日

 学習指導要領(中学校英語)の総括目標では「…聞くこと、話すこと、読むこと、書くことなどのコミュニケーション能力の基礎を養う」となっていることを2月19日号で問題にした。つまり、この「など」が何を想定しているのかがわからないからである。
 そうしたら、「英語教育」2008年4月号(大修館書店)が、「授業にプラスαの要素を!〜『5技能』組み合わせのすすめ〜」という特集をして、その実例を示してくれた。ただし、この特集は、指導要領(案)が示される直前に書かれているので、中央教育審議会の答申に基づいている。指導要領でその趣旨が変わったわけではないから、そのこと自体は問題ないが、私はこの特集記事にはかなり異論がある。
 まず「5技能」は何を表すのかという問題がある。実例として「4技能」+「考える力」(p.14)、および+「異文化交流力」がある(p.30)。それでは、「話すこと」を訓練するときは、何も考えなかったのか、How are you ? という挨拶を教えるときは異文化には全く触れなかったのか、といった疑問が沸く。異言語習得の段階には、「機械的な練習」も必要である。この段階では、変な理屈は言わないほうがよい。ある程度「型」が身についたら、状況に応じた適切な表現をするために、思考力や文化理解力が要求されることは確かだが、それらは、4技能それぞれについて廻るもので、切り離して考えるのには私は反対である。
 かつて指導要領は長年にわたって「4技能3領域」にこだわり、「聞くこと・話すこと」は1つの領域として指導することが望ましいとしてきた。そのために、特に中学校段階では「聞くこと」の指導は軽視されてしまった。それが、平成元年の改訂でやっと「4技能の指導」となったのに、答申では「4技能の総合的な育成」などといっているので、また元の木阿弥に戻る恐れがある。こうした傾向に安易に妥協することなどしないで、特に指導的な立場にある英語教員のいっそうの自重した対応を求めたい。
(浅 野 博)

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