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浅野:英語教育批評:「今後の教育の方向」につぃて

Posted on 2009年6月13日

 この10年ばかりの間に、教育について最も精力的に自説を主張してきた一人に藤原正彦氏がいる。その主張の根幹は「国語教育の重視」である。彼の主張については、私は「国語教育の実情についても批判しないと、ひどい国語教育がそのまま続くことになる」という懸念を表明してきた。
 しかし、国語教育の実情というのは、一般には知ることが難しい。1つの方法は、センター入試の問題を見ることである。これなら、新聞にも毎年問題が載る。自分でやってみると、意外と点数が取れないことが多いであろう。そして、どうして、これだけが正解なのかと疑問に思うことも少なくない。こういう問題を受験準備でやらされる高校生は気の毒だ。
 藤原氏の書物の1冊に『日本人の衿持』(新潮社、2007)がある。これは副題に「九人との対話」とあるように、齋藤孝・中西輝政・曽野綾子・山田太一・佐藤優・五木寛之・ビートたけし・佐藤愛子・阿川弘之といった人々との対話集である。中身は藤原氏がしゃべり過ぎるきらいがあるが、英語教育の専門家はいないので、そういう人たちが国語や英語にどういう考えを持っているのかを知ることが出来る。
 また、藤原氏は、いくつかの審議会の委員としても活躍してきたので、その会合の大勢がどういう意見かもわかる。どの会合も英語優先で、藤原氏の見解は少数意見だったとのこと。役所が招集する審議会などは、その役所の意向に沿った委員が集められ、少数意見も聞きましたという言い訳として、藤原氏のような人も加えるわけだから、最初から結論はわかっているのである。多くの場合、「最初に英語ありき」なのである。これでは、英語教師だった私も素直に喜べない。日本の教育改革は「日暮れて道遠し」の感が深い。

[補記] 私事に関することですが、ここ1年足らずの間に2度引越しをしたので、毎週のブログを書くのが精一杯で、戴いたコメントや質問にお答えする余裕がありませんでした。遅まきながら、昨年暮れからの三名の方々にお答えしました。字数が制限されていますので、十分なお答えにはなっていないと思いますが、今後ともコメントや質問を戴ければ幸いです。
(浅野 博)

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