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(4)元旦に当たって(『湯川秀樹日記』を読む ― ノーベル賞論文の発表と執筆の頃)

Posted on 2009年12月15日

●以下,1934(昭和9)年1月-1935(昭和10)年2月までの1年と少しの日記にそって記述する。(*「。。。。」は日記からの引用文。)

*1月1日 元旦の日記に「1年間のつもり」を書いている。
「我等の前には底知れぬ深淵が口を開いてゐる。我等は大胆に沈着にその奥を探らねばならぬ。実に原子核は物理学者にとって底知れぬ深淵である。」
「二次的なものを見ずして,一次的なるものを見よ。」
「失敗(しま)ったと思った時に気を取り直すか否かが勝敗の分れ目である。」

ここに湯川は,謎に満ちた原子核と取り組む決意を書きつけている。大学を卒業してからすでに6年目である。次々と発表される新たな文献の理解に追われ,やっとその弱点を補う論考をまとめると,すでにその先までやってしまった論文が世に出て,先を越されたとあせる。まだ彼は論文を1本も書いていない。生涯でもっとも苦しい2年間であったと晩年の湯川は思い起こしている。
(村田 年)

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