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マッカーサーの愛誦詩「青春」

Posted on 2010年5月9日

1.「青春」の登場
知っておられる方も多いだろう。ウルマンの「青春」という詩がある。連合国軍総司令官だったダグラス・マッカーサー元帥が額に入れて執務室にかけて,自身の座右の銘とし,訪れる人にも勧めたと言われる。

「青春」(”Youth”)は1945(昭和20)年の “Reader’s Digest” 12月号に,「マッカーサー元帥に捧げる」として,掲載されて広く知られるようになった。また,1955(昭和30)年にマッカーサーがロスアンジェルスでの講演の中でこの詩を引用し,日本人の間にさらに知られるようになった。1958(昭和33)年に森平三郎氏(元山形大学学長)が群馬の「東毛毎夕新聞」に訳詩と解説を載せた。訳は彼の東京高等工業学校時代の同級生で,財界人である岡田義夫氏のものであった。この訳詩が松下幸之助氏の目にとまり,インタビューで紹介され,さらに有名になった。

岡田訳は格調高い名訳として多くの会社の朝礼で,研修会で朗唱・音読された。トッパン会長の宮澤次郎氏を会長に「青春の会」が組織され,米澤工業会を中心に「青春の詩碑」が立てられ,ウルマンの遺族も呼んで祝賀会を催し,ウルマン賞を制定し,故郷であるアラバマ州バーミングハムにウルマン記念館を開館した。松下幸之助氏,盛田昭夫氏を初め財界のトップ200名ほどがこのような企画の後押しをしたというから,当時の熱気が推察できよう。

経済界の熱愛にもかかわらず,英語教育の世界ではそれほどもてはやされず,高校・大学の教科書にもあまり採用されず,案外この詩を知らない英語教師も多かったのではないだろうか。
(村田 年)

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