2.オリジナルの邦訳
オリジナルの邦訳で,最もよく知られている版を示す。
青 春
Samuel Ulmann 作
作山 宗久 訳
湯淺 良之助 改訳
青春とは人生のある期間をいうのではなく、
心の持ち方をいうのだ。
バラ色の頬,紅(くれない)の唇,しなやかな肢体のことではなく,
たくましい意志,豊かな想像力,燃えるような情熱をいう。
青春とは人生の深い泉の清新さをいうのだ。
青春とは怯懦(きょうだ)を退ける勇気,安易を振り捨てる冒険心を意味する。
ときには,二十歳の青年よりも六十歳の人に青春がある。
年を重ねただけで人は老いない。
理想を失うときはじめて人は老いる。
歳月は皮膚に皺を増すが,情熱を失えば精神はしぼむ。
苦悩・恐怖・失望により気力は衰え,生気ある精神は,芥(あくた)になる。
六十歳であろうと十六歳であろうと,人の胸には,
驚異に惹かれる心,子供のようなあくなき探求心,
人生への興味の歓喜がある。
君にも吾にも,心の中枢には,無線の通信局があるのだ。
人から神から,美・希望・喜悦・勇気・パワーの
霊感を受ける限り君は若い。
アンテナが低く垂れ,精神が皮肉の雪におおわれ,厭世の氷に閉ざされるとき,
二十歳であろうと人は老いる。
アンテナを高く張り,希望の電波をとらえる限り,
人は百歳であろうと,最後まで青春を謳歌して,生を全うすることが出来るのだ。
このオリジナル版は,具体名詞を多くして,具体的に,わかりやすく書かれている。改作版はかなり抽象的になり,その翻訳である岡田版はさらに抽象的になっている。抽象的な漢文調は年配者には訴えると思われるが,若い人はオリジナルの具体性を好むかも知れない。
いずれにしても原本がはっきりした以上,原則として原本を用いなければならない。作家に無断で字句を改変してはならない。今後はこの原則にできる限り早く合わせなければならないであろう。
(村田 年)