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(人称)代名詞の指示が両(多)義的

Posted on 2010年11月22日

今回の(18)Tom hit Bob, and John hit him.において、両義性に係わるのが、最後の(人称)代名詞himの指示であることは、わかり易いでしょう。更に、前の文から、後の文への流れから、後のhimの指示が、前の文のBobか、Tomであることも難しくはないでしょうし、それぞれ、AとBの解釈になるでしょう。
A:TomはBobをなぐり、その後JohnはBobをなぐった。
B:TomはBobをなぐり、その後JohnはTomをなぐった。
(18)の接続詞andが、時の経過もしくは因果関係に係わることが、十二分に考えられ、通例、第一義的に、(18)は、上記AとBの解釈が可能で、両義的と考えて差支えないでしょう。
ここで、第一義的解釈に限らない、異例にしても可能な解釈全般を考えておきましょう。今は昔ですが、Chomskyの束縛理論Bが思い出されまして、「統率範疇において、代名詞類は束縛されない」から、当該のhimは、主語のJohn以外のすべての男性を指示することが可能で、両義的どころか多義的なのです。尚、主語のJohnが指示される場合は、him→himselfとなり、これこそが、束縛理論A「統率範疇において、照応詞は束縛される」の典型的な事例になっています。
 次回は、次の(19)で、今までの18個と異なり、異論の余地があり、両義性を解決されましたら、この異論の余地も、ご考察下さい。

(19)The minister didn’t talk until noon.

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