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“ふり返り”の特集号を読んで思うこと

Posted on 2012年9月24日

(1)「英語教育」(2012年10月号)の特集は、「『ふり返り』でつくる、もっと良い授業」ですが、私はまず“ふり返り”って何だろうと思いました。明鏡国語辞典(大修館書店)によれば、“ふり返る”は、「過ぎ去った事柄を思い返す。回顧する」とはありますが、名詞の“ふり返り”はありません。広辞苑も同様です。間違いではないのでしょうが、啓蒙的な雑誌の特集では、できるだけ一般的な言い方をしてもらいたいと思いました。

 

(2)最初の記事のタイトルは、高橋一幸(神奈川大)「授業改善はじめの第一歩:自分の授業を reflection しよう!」です。”reflection” は、英和辞典では、「熟考して得た考え、意見、反省」などの定義がしてありますが、“ふり返り”とはすぐには結び付きません。明鏡辞典の「ふりかえる」には、「今日の試合を振り返って反省にふける」という例文があって、“ふり返る”には、“反省する”という意味は含まないように思えるからです。「これまでの授業の反省を、明日からの授業に活かすために」といった特集であれば、分かりやすかったのにと思います。

 

(3)2番目の記事は、金森強(松山大)「アクション・リサーチ(AR)で取り組む授業改善とSelf-study による教師の成長」ですが、本文を読んでみても、このタイトルと「特集」との関係がよく分かりません。“アクション・リサーチ”は、1つの指導法として立派なものと私は認識していますが、それならば、他の指導法にも言及すべきではないでしょうか。”Self-study” という英語を使用する意図もよく分かりません。『ジーニアス英和』には、“内省”という意味もあるのですが、やはり一般的な意味は、“独学”でしょう。廻りくどいタイトルは避けるべきではないでしょうか。

 

(4)太田洋(駒沢女子大)「授業中、コミュニケーションのために英語を使っていますか?―英語を使う場面とその姿勢、そのための英語の力をつける練習法」も長いタイトルですが、言わんとするところは分かります。教室英語(classroom English)を使用することは私も賛成ですが、その際は、「目的とタイミング」が明確であることが必要です。「何でも英語で言えばよい」といった考えでは、生徒の学力差を大きくしてしまうだけだと思うからです。

 

(5)太田氏の記事は、細かいところに配慮をしながら、熱心に自分の信じるものを説いていますが、まず“教室英語”の定義を明確にすべきでしょう。その他の記事でも、各執筆者は指導方法や問題点に関しての博識を披露しながら熱心に自説を述べていますが、「特集」としてのまとまりが感じられないのです。これは編集方針の責任でしょうから、もっと分かりやすい特集にしてもらいたいと編集者に要望しておきます。(この回終り)

(浅野 博)

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