言語情報ブログ 語学教育を考える

浅野:英語教育批評:大学入試センターの問題について

Posted on 2007年1月29日

 1月20日、21日の大学センター入試のうちの、英語と国語の問題をやってみた。英語は単語のレベルもだいたい4, 5千語レベル以内で、文章は概して平易だ。昭和40年代(1965−1975) 頃までは、公立中学でも英語は「週5時間」が多かったので、この程度の英文は、中学3年生が教科書で読んでいたように思う。30年後には、高校修了時のレベルになってしまった。
 本文が易しいので、設問や答の選択肢でひっかけるような意地悪なものが少なくない。これでは、本当の英語力を測っているとは言いがたい。高校や予備校の英語教員からどのような意見が出るかを待ちたい。
 国語の場合は、高校生向きの結構歯ごたえのある文章なのだが、設問と選択肢は英語よりひどいと私には思えた。例えば、小説の部分をかなり長く(5千字以上)読ませて、5題の設問に答えるものがあるが、そのうち4題は、各5つの選択肢だけで、350〜450字になる。設問の1つは、「『絹代さんにはなぜかそれがとても嬉しかった』とあるが、この部分を含む子どもたちとのやりとりを通してうかがえる『絹代さん』の心情とはどのようなものか」というものだ。私は、作者が「なぜかとても嬉しかった」と書いているのだから、「絹代さんはどういうわけかわからないが嬉しかった」のだと思うのだが、そこを執拗に分析して「嬉しかった理由」を見つけなければ、小説を読めることにはならないのだろうかと憂鬱になった。これでは、国語を好きになる生徒が少ないのも無理はない。客観テストでは、選択肢を作るのが非常に難しいのもわかるが、“微妙な”違いのある、似たような長い文章をいくつも読まされるのはつらいものだ。
 それとは別に1つ注文したいのは、長文の素材で、漢字の読みや短い語句の意味を問うのは止めてもらいたいことだ。傍線や記号がやたらと多くなるし、設問から戻って、その箇所を探すのも楽ではない。読ませたいなら、なるべく読みやすい形で提示すべきではないか。
(浅 野 博)

Comments (0) Trackbacks (0)

Sorry, the comment form is closed at this time.

Trackbacks are disabled.