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浅野:英語教育批評:英語教育と「生活保護」

Posted on 2007年3月26日

 自分でもおかしな題だと思うが、理由は読めばわかっていただけると思う。テレビでは家庭の家計診断をやることがある。例えば、年収400万円ほどの4人家族で、貯金が全く出来ない場合、どこをどう切り詰めれば少しでも余裕が出るかといったことが相談の対象になる。「生活保護」を受けている母子家庭などの場合は、切り詰めようがないから、いかに困っているかを訴えるルポルタージュになることが多い。
 実は「英語教育」2007年4月号(大修館書店)の特集「授業名人に聞こう!〜年度初めのこんな時どうする〜」を読んで、そんな連想をしたのである。忠告の内容そのものは間違ってはいないのだが、今ひとつピンとこない気持ちが残った。
 例えば、「今年の中1は能力差がありすぎになりそうです」(これは変な日本語)という問題について、「…自己表現のある授業を展開し、『互いに学びあう生徒』『自分や相手の存在を大切にする生徒』『英語で自己表現やコミュニケーションを楽しむ生徒』を育成したいものです」と言われても、「それが出来ないから困っているのです」と私が質問者だったら言いたくなる。個別面談ではないので、これは一般論の限界なのであろうか。
 もう1つ感じたのは、この特集で指摘されているような諸問題が、相互にどう関係し、それがどこから生じているのかという、全体的な俯瞰図のようなものを認識する必要性である。「生活保護」はこれだけを論じても意味がない。「労働基準法」「最低賃金」「年金問題」「超過勤務」など関連することを総合的に問い直すことが必要なのだ。現在の多くの教育問題は、文科省の進める「学校の多様化」と深い関係がある。賛否は別として、「多様化」にはどういう長所と短所があるかを把握しておくべきだ。3月21日の夜のNHKの「“学校”って何ですか?」はかなり総合的に教育の問題を追及していた。もちろん、それで問題が解決されたということではないが、取り上げ方には学ぶところがあったように思う。
(浅 野 博)

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