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浅野:英語教育批評:英単語の覚え方

Posted on 2007年7月3日

 英語を学ぶ生徒にとって、単語をいかに多く覚えるかは依然として大きな難関なようだ。私自身が受験生の頃も、単語カードを自分で作って必死で覚えようとしたものだ。ただし、「単語は自分で工夫をして覚えるもの」という意識が強かったから、中高生を教えるようになっても、単語の指導ということはあまり意識しなかった。しかし、「単語集を最初から暗記するのは意味がないよ」とか「単語を棒暗記する時間があったら、なるべく多くの英文を読みなさい」といった注意はしたつもりだ。
 晴山陽一『記憶の「9マス英単語」』(文春新書、2007)を買ってみた。数学の「9マス計算」というのが有名だが、これはなかなか手強いので、英語のほうに挑戦してみた。なんのことはない。同意語、反意語から始まって、接尾辞、接頭辞、語幹などの共通点のある単語を8つくらい「かたまり」で覚えようということだが、次のような疑問が湧いた。
 原則として、要求された単語を思い出す手がかりは、1つの訳語である。例えば、「接頭辞 con-(共に) がつく」をヒントにして、
「結論を出す」— conclude
「混同させる」— confuse
「意識している」— conscious
「〜から成る」— consist
「転換する」— convert
「同意する」— consent
「契約する」— contract
「便利な」— convenient
という8つの該当する単語を思いつく高校生は何人いるであろうか。いくらゲームだと言われても、半分以上思いつかなければ、先へ進む意欲も湧かないのではないか。また、「〜からなる=be made up of 」「同意する=agree」と覚えていてもダメだし、「意識する」という動詞を思い出そうとする生徒もいるであろう。「混同させる」は日本語としてもなじみがうすい。要するに、文脈のない状況で、「日本語=英語」という図式の単語の暗記はあまり効果的とは思えないのだ。
(浅 野 博)

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