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浅野:英語教育批評:「ないものねだり」?

Posted on 2007年10月16日

 「英語教育」11月号(大修館書店)を通読して、「ないものねだり」という言葉が浮かんだ。今回の特集は「映画で英語〜授業で使える映画・教師が楽しめる映画〜」である。各記事はそれぞれ力作だとは思うが、全体的には「欲張りだなあ」という印象を受ける。映画を使って、「文法を教えられる」「シャドーイングをやらせる」「作文練習をする」「ALTとの協同授業を」「異文化理解教育や文学も」などなど。また、「日本人俳優たちの英語」についての指摘や、「多様化した国際英語も学べる」という主張もある。
 一方、「英語教育時評」では、ビリーズ・ブート・キャンプの人気の原因を探り、それは手本が立派だからとして、英語教育では「(手本になるのは)教師の話すカッコよさだろう」とも言う。そうかと思うと、投書欄では、斎藤兆史氏の著作を信奉し、会話ごっこなどではなく、基礎訓練と英文法指導を実践していきたいと願う人の記事がある。
 もう1つ気になるのは、投稿「『名前教育』を意識した英語教育の必要性」である。人名は難しい。私など50年以上教師をしたが、毎年のように新しい名前に出会ってきた。私の名は「あさの」だが、「浅見さん」は「あざみ」だ。「岩川さん」にも「いわかわ」と「いわがわ」と二通りある。英語で書かれた論文の著者名も、最近では英米人でも自信をもって読めないものが増えている。旧友の牧野勤さんは、在米中に「マッカイノウ」と呼ばれたことがあるそうだ。私は初歩の英語学習では簡単なもので済ませるという現在の方針に賛成である。
 内容豊富なこの「英語教育」誌についての私の「ないものねだり」は、「予算」と「版権」に関する記事が欲しいということだ。映画を使うためには、設備に金がかかる。少し触れている記事もあるが、貧弱な教育予算の増額をもっと強く要望したい。版権については、映画英語教育学会が創立以来問題にしているが、教員が無関心になりがちのことだけに重要な問題だと思う。
(浅 野 博)

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