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浅野:英語教育批評:「新指導要領(案)」の問題点

Posted on 2008年2月19日

 2月15日に新指導要領がやっと公表された。中学校(英語)について次の3点を問題にしてみたい。
(1)総括目標では「…聞くことや話すことなどの実践的コミュニケーション能力の基礎を養う」が、「…聞くこと、話すこと、読むこと、書くことなどのコミュニケーション能力の基礎を養う」となった。「読み書き」が軽視されないようにとの配慮であろうが、これまでは「各学年とも、2の(1) 言語活動のうち、特に聞くこと及び話すことの言語活動に重点を置いて指導すること」としていたのだから、「読み、書き」が軽視されても当然だったのだ。4技能を示したのはよいが、「…など」で何を想定しているかは、解説書が出るのを待つよりない。
(2)単語数については、「週4時間」になるので、「900語程度」を機械的に「1,200語程度」にした。そして、指導上の注意として、「…運用度の高いものを用い、活用することを通して定着を図るようにすること」とある。これではすべての単語について、発音、綴り、意味、用法まで定着させることになる。「聞いてわかる」「文字を見てわかる」といった「理解語彙」の増加を図らないと指導要領が示す言語活動などはうまくこなせないはずだ。
(3)「日本」「日本人」を意識させる意図は前回と同じだが、今回はさらに「日本語」との違いを意識させている。
 「音声指導に当たっては、日本語との違いに留意しながら、…」は、当然なことではあるが、「日本語音声学」を実践的な見地から学ぶ機会が英語教員にあるだろうか。教員養成とも関係する大きな課題だ。
 文法事項についても、「また、語順や修飾関係などにおける日本語との違いに留意して指導すること」とある。英語教員は日本語の文法を知らず、国語教員は英語が嫌いだということをよく耳にする。これが事実であれば、適切な指導はほとんど望めない。
 また「道徳の指導」とも関連させよとの指示があるが、余計なお世話だと思う。異言語を学ぶ姿勢がしっかりしていればよいはずだ。
(浅 野 博)

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