言語情報ブログ 語学教育を考える

両義性が、文の種類に由来しています

Posted on 2010年9月9日

 (6)Such a man would be happy with no job.という平叙文における両義性は、A:肯定文とB:否定文という文の種類に由来しています。
A: With no job such a man would be happy.
B: With no job would such a man be happy.
何とか解釈できそうなのは、A肯定文の方で、with no job「仕事がないと」とわかりますと、with much job「仕事が多いと」に変更したA’と同じ種類の解釈になるのです。
A‘: With much job such a man would be happy.
AでもA‘でも、with no/much jobがこの句内部で完結して、文全体が肯定文になっています。
 これに対して、わかり難そうなB否定文は、with no jobをwith much jobに変更できません。
B‘:X With much job would such a man be happy
否定文Bでは、with no jobだけが、noという否定辞によって、主語such a manと法助動詞wouldとの倒置とも符合する否定文化を担うのです。
 (6)Such a man would be happy with no job.の両義性は、次のようになります。
A: 仕事がないと、そんな男は満足しているであろう。
B: どんな仕事にも、そんな男は満足しないであろう。
文末を比較して、肯定文と否定文の相違は明白ですが、両者の意味が微妙に近接もしており、このことが、AがわかってもBがわかり難い一因でしょうか。

次回は、次の(7)です。中学校2年生で習うことが多いようですけども。
(7)The scholar has a number of followers.

X is YとY is Xとは、完全同義にあらず

Posted on 2010年9月7日

(5)Who is your aunt?は、中学校1年生でも既習ですが、A:your aunt is whoからでも、B:who is your auntからでも、(直接)疑問文としては、形として(5)だけになってしまうのです。このAとBを、そのまま英語から日本語に置き換えれば、解釈することはできます。
A: おば様は、どなたですか。
B: どなたが、おば様ですか。
日本語(学)で知名度の高い、「ハ」と「ガ」について、「ハ」が旧情報を担い、「ガ」が新情報を担うということが見事に実現されていて、AとBの両方が、日本語教育にも使えそうな教材を提供しているのでは、ないでしょうか。尚、どなたがはっきりしなければ、どなたに具体的女性名を代入することです。
A‘: おば様は、マサコサマですか。
B‘; マサコサマが、おば様ですか。
 また、(5)の両義性を形に反映させるのであれば、次のような書き換えが可能です。
A: I ask you who your aunt is.
B: I ask you who is your aunt.

 次回は、(6)で、一方の解釈がやっとわかっても、他方の解釈は、容易ではないでしょう。
(6)Such a man would be happy with no job.

eachの解釈が一義的ではありません

Posted on 2010年9月2日

(4)Each of my sisters loves a man from Texas.から、A Man from Texasという歌詞を思い出された方々も少なくないかとも存じますが、my sisitersが二人としても、eachの解釈は一義的ではありません。
 便宜的に、二人のmy sistersを、my sister 1とmy sister 2とすると、(4)Each of my sisters loves a man from Texas.は、My sisiter 1 loves a man from Texas, and my sister 2 loves a man from Texas.と言い換えることができます。ここに二義性が生じます。Aは、my sister 1 が愛するa man from Texasとmy sister 2 が愛するa man from Texasが異なる場合、これに対してBは、my sister 1 が愛するa man from Texasとmy sister 2 が愛するa man from Texasが同じ場合です。
A: 私の姉妹は、それぞれ別のテキサス出身の男性を愛する。
B: 私の姉妹は、一人のテキサス出身の男性を愛する。

 次回は、(5)の両義性を扱います。中学校1年生が既習の教材でもあるのです。
(5)Who is your aunt?

no …ing自体が両義的

Posted on 2010年8月30日

no …ing自体が両義的
(3)There is no smoking in this building now.は、直訳して、「今、この建物では、禁煙である。」としても、no smokingが「禁煙」に変わっただけで、依然として両義的のままです。
 no smoking「禁煙」は、助動詞を補って言い換えると、A:may notを用いてmay not smoke、B:can’tまたは cannotを用いてcan’t [cannot] smokeと、二様に解釈されます。その昔、may notとcannotの相違を、「今、人前で、逆立ちすることはない (probability, may not)、しかし逆立ちができない (possibility, cannot) 訳ではない」と英語話者が説明していました。これを上に当てはめると、A:may not smokeは、「喫煙する可能性があっても喫煙が許可されていない」という意味であり、これに対しB:cannot smokeは、「危険性なりが理由で、喫煙することが不可能」という意味になります。
A: 今、この建物で、喫煙することは許可されていない。
B: 今、この建物で、喫煙することは不可能である。

 次回は、次の(4)の両義性を扱います。my sistersは二人としてお考え下さい。
(4)Each of my sisters loves a man from Texas.

発話行為の副詞と疑問文の二面性

Posted on 2010年8月26日

発話行為の副詞と疑問文の二面性
 (2)Confidentially, did you like this textbook? においては、文頭のconfidentiallyという発話行為の副詞と、後続するdid you like this textbook?という疑問文全般の二面性が、全体の両義性に関連します。まず、Evidently you liked this textbook.において、文副詞Evidentlyは、It was (is) evident thatと換言可能ですけれども、発話行為の副詞confidentially等は、文よりもより上位の発話に関連しており、このようには換言できず、発話に限定を加えているのです。
 次に、疑問文全般の二面性とは、通例、両面的で区別されないのであるけれども、話者が尋ねるという面と聴者が答えるという面から、疑問文が成り立ってと考えることができます。Aは、話者の尋ね方が発話行為の副詞に限定される解釈で、Bは聴者の答え方が発話行為の副詞に限定される解釈です。
A: 内密に、尋ねてますけど、この教科書気に入りましたか。
B: 内密に、答えて欲しいのですけど、この教科書気に入りましたか。

 次回は、次の(3)の両義性を扱います、両義的箇所はどこでしょうか。
(3)There is no smoking in this building now.