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浅野:英語教育批評:「音読指導」について

Posted on 2009年10月20日

(1)「英語教育」(大修館書店)2009年11月号は「音読でどんな力を伸ばすか」を特集している。12名の筆者が、考え方、指導技術、実践報告に腕を競っている。ただし、私としてはいつものように注文をつけたい点がある。
(2)まず一読して感じるのは専門用語の多さである。筆者の何人かは研究紀要のつもりで書いているのではないかと疑いたくなるくらい専門的である。前にも述べたように、雑誌の主な使命は啓蒙記事にある。経験の短い教員や教員志望の大学生などにもかなり読めるものであってほしい。
(3)例えば、次のような用語を知っていなければ、雑誌の記事が読めないというのでは問題ではなかろうか。
 「スキーマ」「談話」「シャドウイング」「イチゴ読み」「バズリーディング」「クローズ音読」 ”Read and Look Up” などおよそ30以上。
参考文献にも簡単に参考できないと思われるものが少なくない。紀要論文に言及してはいけないと言うつもりはないが、それならば、連載記事の「海外新刊紹介」や「英語教育研究と実践」のような親切な解説がほしいと思う。
(4)高校生が知らない単語が1ページに30以上もあると、読むのをあきらめてしまうように、あまり知らない専門用語の多い記事は読まれないであろう。テーマによっては専門用語が多くなる場合もあろう。そういう場合は、「キーワード解説」のようなページを設けるのも1つの方法だ。または、『英語教授法辞典』や『英語教育用語辞典』のような書物を紹介して、勉強を促すのも必要であろうが、こういう書物にも印刷物としての限界があるのである。
(5)音声重視の特集をしても、Question Box は、相変わらず細かい語法の問題を論じている。もちろん語法研究も大切だが、このところ発音に関する質問が扱われた記憶がない。「若い教員は発音記号も読めないから発音など関心がないですよ」という声を聞いたことがある。事実としたらとんでもないことだ。
(6)特集の記事の中には、カタカナ表記に言及しているものもあるし、高校生用の英和辞典でも「カナ表記」を併用しているものが増えているが、問題点はたくさんある。現在の英語教育は、何か歯車がくいちがったままで、回転しているように思えてならない。(浅 野 博)

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  1. 『英語教育』誌の特集「音読でどんな力を伸ばすか」に注目し,ざーと眺めましたが,まだ詳しく読もうという気持ちにはなれません。相当勉強にはなりそうですが,私の個人的な思いにぴったりの記述が見つかりません。

    英語が苦手の生徒に対しての音読指導の効果などに惹かれますが,この特集全体の音読指導が授業中心で,その復習などにはほんの少ししか触れていないようです。私自身は,復習や自習における音読こそ大きな力になると確信しているので,この点をどなたかが書いてくれたらうれしかったのですが。

    実は私は,高校入試に英語がないときに,英語をほとんど勉強せずに高校に入りました。勉強の仕方がわからず,ただただ音読して日を送り,寝ても覚めても教科書の英語が口から出てきて,やがてそれが生きて使えるようになった経験があります。高校の教師になったときはまだかなり高校1年のときの教科書の英文は覚えていました。

    自学自習における音読,朗読,只管朗読の効果について書いてくれる人がいてほしかったです。(村田 年)


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