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日本人の学習形態を変えたらどうでしょう?2

Posted on 2009年11月12日

学力低下と言うが,問題そのものが日本人に不利では?
国際学力テストにおいて,今までトップクラスだった日本の高校1年生の学力が落ちたと騒いでいましたが,ここで気をつけなければならないことが1つあります。それは問題はまず英語やドイツ語で作られます。ここに文化・習慣・論理の順の違いが反映されます。さらに翻訳された日本語の文章が日本人にはしっくりこないところがあるようです。これだけのハンデがあるのですから,41ヵ国中4位から8位に入っていれば上々との観点もあるでしょう。

「読解力」だけは,8位から14位に落ち,新聞などでいろいろな批判がなされ,これが「ゆとり教育」の見直しをさらに早めた感があります。しかし,考えてみれば,この問題「読解力」は文章題で出され,解答も文章で書くわけですね。ですから,先ほどのハンデがさらに大きく作用するわけです。

情報を出す順番が異なり,攻める論理が異なり,抽象的な記述とその具体化の方法が異なります。また陳述の断定方法が異なります。ですから,翻訳のニュアンスはおそらく原文とは相当異なるものになる可能性があります。

さらに,解答方法が文化によって違います。結論から先に行く欧米と周りから攻める日本人,Yes, No が必ずしも明確でない日本人と,要素の違いがいろいろとあります。Yes ひとつを取っても日本人と欧米人では違います。「その通りだと思いますが,しかし...」と続ける日本人の解答は減点対象になりやすいでしょう。

解答を見た先生方の感想として,日本人はわからないところは書いてないが,ヨーロッパでは,わかってもわからなくても全部書いてあるので,部分点になりやすかったとのコメントもありました。

それから,エコが出題の最大の話題になっているようですが,温暖化などの論法は,欧米の常識的な線で行われ,自然科学としては間違っている,専門家がひとりも出題に加わっていないとの批判が日本の専門家の間にあるようですね。

★ひとことでまとめると,学力の国際比較は,出題の文化的背景,問題の正しさ,解答の文化的相違,言語の語用論的な相違など多くの問題点を含んでおり,そのまま信用してあたふたしないで,参考程度と受け取った方がいいということです。★ (村田 年)

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