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浅野:英語教育批評:「鳩山論文」と英語のこと――「英語教育」

Posted on 2009年11月24日

12月号の記事に関連して――
(1)「英語教育」(大修館書店)2009年12月号の「英語教育時評」の筆者は鳥飼玖美子氏で、「鳩山論文から考える――使える英語とは何か?」と題してある。
 前半は、「電子黒板」のことに関連して、限られたテレビ報道の映像ではコメントしにくいが、と断りながらも、鳩山首相にその効果を説明する場面で、教師が画面を指しながら、”Banana! Banana! OK?” と教えているのでは、この機器に膨大な税金を投入する意味がないことを述べている。電子黒板については、私のブログでも前に論じたことがあるので、ここではこれ以上は触れないでおきたい。
(2)「鳩山論文」とその米国での反響については、鳥飼氏自身も朝日新聞(9月17日付)で詳しく論じられたし、インターネット上でも、読みきれないほどの賛否両論があふれている。しかしながら、鳥飼氏が「英語教育」誌の原稿を書かれたのが、十月初旬とのことで、その後の1ヶ月の間の鳩山首相の変節ぶりを見れば、この問題をまともに論じる意味はほとんどなくなったと私は考えたい。
(3)鳥飼氏が提起しておられる2つの問題、「英米人に理解されるための発想や論理のあり方」と「世界の英語たち(World Englishes)の時代に、どのような“使える英語”を日本人が目指すべきか」という問題提起は重く受け止めたいと思う。
(4)この号では「英語教師のために今日から役立つブックガイド」を特集している。「教育の今を知りたい」という教育問題の基本を論じたものから始まって、指導法、教材、時事問題など、英語教師として知っていることが望ましい書物が紹介されている。一般的な書評でもそうだが、選ぶ基準は、批評者や編集者の主観に依存するから、「こういう本が取り上げられていない」と文句を言うつもりはない。ただし、特集のタイトルの「今日から役立つ」は少し性急過ぎるように思う。よく読んで、考えてから実践に移すべきテーマも多いと思うからだ。
(5)「2009年にアメリカで話題になっている本を知りたい」「読んでおくべき『オバマ本』を知りたい」などのタイトルもあるが、時宜を得たものという反面、アメリカに偏り過ぎるのは問題であろう。鳥飼氏の記事ともよく読み合わせておきたい。
特集記事の最後には1ページを使って、紹介された書物の一覧表があるのは親切だが、出来れば「英語教育」誌上で書評に取り上げられたものがわかるとなおよかったと思う。(浅 野 博)

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