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(2)量子論を専攻する(『湯川秀樹日記』を読む ― ノーベル賞論文の発表と執筆の頃)

Posted on 2009年12月13日

湯川は三高の3年生のとき,フリッツ・ライヘの『量子論』を読み,大きな刺激を受ける。まだ誕生間もない量子力学は暗中模索の段階で,矛盾と混乱に満ちていたからこそ,かえって湯川に大きな夢と刺激を与えたようだ。

京都帝国大学理学部物理学科に進学し,3年生の卒業研究を決める段階でも,京大には量子論を専門とする先生はいなかったので,同級の朝永振一郎とともに力学・相対論の玉城研究室に所属し,自学自習で勉強していくことにした。

早く世界の研究者のレベルに追いつき,今現在の難題に自分も加わりたいとのあせりの気持ちがあった。卒業し,無給の副手となり,1932(昭和7)年に理学部講師に採用
されるも,まだ1つも研究論文がない。この年に結婚し,妻の両親といっしょに住み,子供も次々と生まれ,いろいろとたいへんであったと推察される。が,研究一途の湯川にとって,精神衛生上,結婚はたいへんよかったであろう。「日本人でもノーベル賞は取れるの?」と聞いた妻の明るさは,やや暗く,ひととあまり口をきかない湯川にはどんなにか慰めになったことであろう。
(村田 年)

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