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(12)研究発表は不評(『湯川秀樹日記』を読む ― ノーベル賞論文の発表と執筆の頃)

Posted on 2009年12月23日

11月17日 「数物は一時半開会。五時前,小生講演。六時前に終る。仁科さんの激励あり。」
湯川は話すようにきちんと書いてきた原稿を,小さな声で淡々と読み上げる。質問もなく,盛り上がりのない講演だった。ぼそぼそと読み上げるだけで,何を言っているのかわからない,といった陰口が聞こえ,肯定的な雰囲気ではなかったようだ。

理研のひとたちには前もって簡単に内容の説明をした。仁科,朝永を初め理研のメンバーは,未知の粒子の存在を予測するというアイディアはおもしろいが,その大胆さと斬新さにはついていけないという反応であった。しかし仁科先生はそういう新しい粒子が宇宙線内で見つかれば面白くなるね,と非常に興味を示された。
(★これがノーベル賞受賞となる中間子論第1論文になる。)

新橋で朝永,小林両名に金ぷらを御馳走になり,夜汽車に乗り,翌朝大阪に着く。帰ってみると,相変らず長男の春ちゃんは下痢が治っていない。午後は散髪に行ってから昼寝をする。
(村田 年)

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