5.湯川秀樹の授業(湯川秀樹の学習,研究,人となり)
Posted on 2009年12月31日
まだ出来上がりつつある分野で,何の教科書もなかったので,英語の専門書を訳し,ていねいに説明する。小さな声で,何の抑揚もなく,どこを強調するでもなく,ぼそぼそと話していった。学生の顔を見ないばかりか,黒板の方ばかり向いていたりした。何の脱線もなく,子守唄のようであったという。「みなさんに,全て優をあげます。みなさんはよい成績を喜びますから。」とも言ったが,サボる学生はいなかったらしい。ほかでは得られない内容だと学生たちはわかっていたのであろう。
年配になって,プリンストン高等研究所から帰国してからの授業は相当変わってきていて,声もかなり大きくなり,アインシュタインなど一流の学者とのやり取りなどのおしゃべりがほとんどで,ユーモアもある授業であったが,ノートに書くことはほとんどなかった,との報告もある。
(村田 年)