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読む量,書く量こそ基本―湯川秀樹に学ぶ(2)

Posted on 2010年2月14日

*湯川は,幼小の頃の漢文素読の経験のためか,本は読めるものといった意識が強かった。中学のときにはすでに気に入った洋書を丸善で買ってきて一気に読んだ。わからない本は何度でも読んだ。読書100遍・・・の精神で。
*高校・大学では物理の本は,あまり勉強してないフランス語の本でも読んでしまい,ときにはイタリア語の論文にもかじりついた。読む分量,読む回数,何が何でも内容を読み取りたいという意気込みがあった。

*書くことの大切さ
日記をつけ,これからの予定を箇条書きにし,論文・エッセーの下書きまでがていねいな形で残っているが,これが実に几帳面だ。人は単に本を1冊ずつ読んでいくだけでは成長しないかも知れない。読みながらメモを取り,他の本と比較・考察し,それをまとめて書きつけ,読みとったアイディアをさらに進めるにはどうすればいいか,といったことを考え,文章にする。

*湯川はたいへんに筆まめである。手紙をよく書く。英語でもどんどん書く。最初のアメリカ訪問の日記が公表されているが,毎晩相当の手紙を書いている。今日会ったが,英語で十分に自説を説明できなかったと思ったら,その晩のうちにホテルで手紙を書いて念押ししている。
*コロンビア大学での講義の下調べが,英語で1200枚2400ページになって残っている。これだけ英語を書けば本人としては,英語は日本語と同じように書けるつもりになったであろう。
*書きぐせをつける。湯川は若い頃は枕もとにノートを置いておいて,アイディアが浮かぶと夜中でも飛び起きて書きつけた。こうして物理以外にもあらゆることに知的好奇心を伸ばしていった。
*このように書くことの訓練を積んでいって,やがて湯川はあるアイディアが思い浮かぶと,そのテーマの展開の全体を,一瞬にして碁盤に碁石が整然と並んでいるように,明確に捉えることができるようになったようだ。帰りかけた新聞記者を呼びとめて,口述筆記をさせ,校正なしでエッセーを掲載したりしている。
*湯川の文章は,自然科学的で,論理に乱れがない。外国語の論理が入っていると本人も言っている。だれでも日本語だけでなく,外国語をならった方が普遍的な文章が書けるようになると湯川は言っている。

★第1に読む分量が大事★
★次に何としても内容を読み取るという意気込み★
★読書百遍意自ずから通ず★
★書くことが大事。書きぐせ,書きつける癖をつける★
★外国語の効用のひとつは,その人の書く文章が多くの人に理解しやすいものになること★
(村田 年)

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