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先生の世界

Posted on 2010年9月9日

●教育にとって最も大切なのは? ― それは先生!
4.先生の世界
「先生の世界」は問題が多いと私は思っている。かつては師範学校出が大部分であって,父兄は敬意を表し,無理難題を持ちこむことは少なかった。この「師範学校」というのは学費も寮費もただで,少数精鋭教育をしてくれた。どちらかと言うと貧しい家庭から成績優秀な人材を集めたが,たいへんに小さな世界で,ほとんど全寮制できっちりと教育され,師範学校の伝統通りの型にはまった「先生」が育った。

戦後の学制改革で,相当開けたが,それでも原則として,小学校の教員免許は国立大学と一部の私立大学でしか取れない。普通の学生にとっては,免許状を取得するのは困難であったし,現在もそうである。

従って,先生の世界は,小学校教員養成課程を出た人たちばかりの世界である。大学で相当サークル活動に熱をあげた人以外は総合大学の利点をあまり経験せずに卒業してしまった可能性がある。学閥が優先されることもあり,千葉県ならば,千葉大学教育学部卒業生が大部分を占め,身うちでまとまる,閉じられた社会を形成しやすい。

1)先生は本を読まない
一般のサラリーマンに比べて先生は,本を買わない,本を読まない,新聞も読まないと言われる。私もそう思う。関係した辞書や本の読者カード,編集者とのおしゃべりなどからもそう思う。怠ける先生は怠け放題だが,真面目な先生は,これまた際限もなく仕事に追われて,一般的な読書などには気が向かないこともあろう。

2)先生になってしまえば安心
先生になってしまえばもう安心。教科書に頼る。教科書にないことには触れない。教師用指導書が見開き2ページで1時間になっているのを10分で読んで,教室へ行って,さも知っていたように話せば済む。こうしてベテランになっても,乏しい自己の経験にすがって,独りよがりになっていれば,定年まで持つ。教員同士の係わりも希薄で,楽な閉鎖社会である。

3)大人の会話ができない先生
敬語が使えない。だいたい先生同士が「先生!」と呼び合っているのはたいへんおかしい。社会常識に欠ける,名刺の交換も知らないし,名刺を作ったこともない先生もいる。電話での受け答えもできないし,時事用語,経済用語などにも極めて弱い。

就職した日から「先生」と呼ばれ,何の社会的訓練もないのだから,自学自習しなければならないのに,それを怠っていたり,あまりにも多忙な状況にはまりこんでしまったりする。「教師力」をつける前に「人間力」「社会人力」を養う必要があるのだが。
(村田 年)

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