言語情報ブログ 語学教育を考える

浅野:英語教育批評:生徒の「提出物」について考える

Posted on 2010年9月18日

(1)「英語教育」(大修館書店)の2010年10月号は「『提出物』で生徒とつながる~そのフィードバックと評価~」という特集をしている。生徒に何かを提出させたら、コメントをつけて返却してやる(フィードバックする)というのは、教室指導の基本であろう。そこでこの特集での寄稿者 13 氏は、それぞれの方法論を、実践例を含めて詳細に紹介している。ただし、「私はこうやっています」というだけではなく、英語科として、他の教員との連携はどうなっているか、という観点からの記述もほしいと思う。私の見落としでなければ、そういう記事が見当たらない。

(2)問題の生徒が多くて授業ができないといった場合には、(もちろん、そういう問題は軽視してよいということではないが)ここでは言及しないで、論を進めることにしたい。宿題とか課題を出す場合は、教師はまず「自分の能力」を考慮すべきであろう。様々な勤務上の条件を考えて、「この程度の提出物ならば、今週中に返却できる」といった予定を立てるのである。そのことは、「生徒が決められた期間内に提出できる分量」とも関連することになる。

(3)以前にも書いたように、最近の教員は小学校から大学まで、「雑務が増えた」「管理が厳しくなった」という声が強い。そういう状況の中で、生徒に返却できる分量を考えるのはとても大事なことだ。佐藤留美(都立西高校)「信頼関係を築く授業評価アンケート」には、生徒が職員室に来て、自分でやった問題の解答を見てほしい、と申し出た際の教員の取るべき態度について述べてある。教師がすぐに見てやれないなら、一応答案を見て、「(先生から返すのは)○○までならいいかな?」と問いかけるべきだと提案している。こういう細かい配慮は大切だと思う。

(4))小金丸倫隆(神奈川県立大和西高校)「提出物のポートフォリオ化による効果」は、まず「ポートフォリオ」の定義を与えて、その活用手順を説いている。英語教員を目指す大学生などの読者を視野に入れたら、やたらと“新語”を振り回すのではなく、このように、まず定義をしてから始める姿勢は評価できる。また、久保田章(筑波大)「提出物による学習意欲の活性化――大学英語での試み――」と、犬塚章夫(東京都港区立赤坂中学)「インターネットでプリントの共有――『わくわくワークシート・ホームページ』――」は、コンピュータ教室での指導を前提にしているので、そういう経験のない読者には理解しにくいであろう。それは、ある程度やむを得ないが、どちらも2ページというのは少なすぎる。こういう記事には4ページはほしい。

(6)そういう要望もあるが、大学の例を挙げたり、北原延晃(東京都港区立赤坂中学)「提出物を出さない生徒への対処」のように、教師が実際に困る場合に言及があったりして、この特集そのものがかなり細かい配慮をしている点は特筆しておきたい。(浅 野 博)

【私の記事に対するコメントは原則非公開扱いとさせていただきます】

Comments (0) Trackbacks (0)

Sorry, the comment form is closed at this time.

Trackbacks are disabled.