言語情報ブログ 語学教育を考える

浅野:英語教育批評:「ライティング指導の実態」を考える

Posted on 2011年2月24日

(1)去る2月19日に、関東甲信越英語教育学会の月例研究会(於お茶の水女子大附属高校)が開かれたので、参加した。発表者は千葉県香取市立小見川中学校の田畑光義先生で、2時間にわたって、中学生のライティング指導の実例を報告されたので、ここに紹介させて頂くことにした。

(2)最近の英語指導は、文科省の意向を反映して、「コミュニケーション→音声英語→話すこと→英会話」といった傾向が強い。田畑氏も、ライティングに関するテーマで発表しようとすると、周囲から「なぜ今ライティングなのか。音声指導のテーマのほうが望ましい」と批判されたとのこと。しかし、氏はそういう声に惑わされることなく、3年間を見通したライティングの目標を立てて、実践されてきた。そして、学習者の成長を知る方法としても、「書いたもの」を記録して活用することが有効と述べている。

(3)学習者が自分の音声や教材を録音したテープを持ちかえることが可能になったのは、1960年代後半になってからである。その後、携帯電話やゲーム機の普及は目覚ましいが、教育面での応用はあまり進んでいない。、生徒の手書きの作文をコピーによって記録したり、配布したりして利用するのは、現在でも確かに有効なことと思う。生徒の改善すべきところを示して、考えさせるといったことがやりやすいのである。

(4)田畑氏の話は、小学校で習うローマ字を中学1年生がどの程度書けるかを調査したり、有名人の紹介カードを利用して指導したりしているいる様子が具体的にわかる発表だったが、中心的方法は、「Can-Do リスト」の活用であった。”Can-Do リスト” とは文字通り、“できること”のリストで、それを読みながら生徒は応用して、自分のことを書いていく。次の例は、3年生が授業中に書いた英文である。

例:I want to be a basketball player. I have three reasons. First, I like basketballl. For example, it it interesting for me to shoot a ball. Second, I think basketball player is very cool. When I went to be basketball game. Isaw many wonderful performance. So, I want to play height level basketball. I think it is very excitement. I want to be a basketball player.

(5)私の推測では、この作品は、中の下か下の上に属すると思われる。細部の誤りを別とすれば、まず結論的な文があり、その理由を順次述べていくなど、“表現の型”と言えるものが出来ている。スピーキングの指導だけでは、こういう点の指導はなかなか徹底しないであろう。称賛に値する作品例だと思う。

(6)批判的なことを1つだけ言わせてもらう。私の持論に、“熱心な教師はあぶない”というのがある。田畑氏にも、多少そういう傾向がある。熱心で、親切で、欲張り過ぎるのである。発表にもそういう点が見られて、例えば、生徒の答案を回覧されると、参加者は資料は見たい、話しも聞きたいということになって、落ち着かない。そういう点にも少し配慮してもらいたいという気がした。(浅 野 博)

Comments (0) Trackbacks (0)

Sorry, the comment form is closed at this time.

Trackbacks are disabled.