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浅野:英語教育批評:「話すこと」ことの指導を考える

Posted on 2011年6月20日

「話すこと」ことの指導を考える
(1)「英語教育」誌(大修館書店、2011年7月号)の特集は、「4技能統合におけるスピーキングの指導」である。スピーキングは、中学生から成人まで、日本人が一番苦手に思っている技能のようだ。1つの理由は、「独習がしにくく、しかも話す機会を失うとすぐに衰えてしまう技能」だからであると思う。この問題について、どういう解決方法を示してくれるであろうか、と期待をして今回の特集を読ませてもらったが、かなり失望した。その理由を述べていきたい。

(2)冒頭の記事は、向後秀明(文科省教科調査官)「4技能統合におけるスピーキング指導はどうあるべきか」であるが、指導要領に書いてあること以上のものは得られなかった。そして、次のような記述にはちょっと驚いた。
「話すことに関する活動は、言語材料などについての十分の理解があって初めて成り立つものである、という考え方に捉われすぎると、常にインプット→アウトプットという指導順序を意識し、結局英語を使って発信するための時間が確保できなかった、といった事態になりがちである」(p. 11)

(3)廻りくどい文章だが、次のようなことを言いたいのであろうと私は推測した。
1. 言語材料などについては、十分な理解は必ずしも必要ではない。
2.「インプット→アウトプット」の順序は、常に意識する必要はない。
3. 何よりも、スピーキングのための時間を確保すべきである。
私はこうした考え方には賛成できない。ちなみに、竹下厚志(神戸市指導主事)「スピーキング活動につなげるインプット活動」という記事もある。ここにもかなり飛躍した記述があるが、「インプット→アウトプット」という手順は重視しているように思われる。(ただし、実例は高度な高校用である。)

(4)原田尚孝(熊本市立桜山中学)「英語が苦手な生徒に話させる工夫――スモール・ステップを踏んだ指導のプロセス」は、まず次の5段階を示している。
ⅠFree Conversation、 Ⅱ.Asking Questions、Ⅲ Pair Work、Ⅳ Skit Presentation、Ⅴ Show and Tell
Free Conversation の実例:
T : What is the date today? S1: It’s July 7th. T : What’s your favorite class? S3: It’s English. T : What time did yo go to bed last night? (以下略)
こんな会話が出来る生徒が「英語が苦手」なのであろうか。それにしても、この問答は、スピーキングを教えているとは思えない。まるで、不審者を捕まえた警官の尋問のように感じるのは私だけであろうか。

(5)他の記事でも実例のレベルが高く、小学校と高校との板挟みで、一番苦労の多いはずの中学校向きの記述がない。英語を話すことの基礎は「発音」であろうと私は思う。安木真一(鳥取県立鳥取西高校)「様々な発声練習法」では、音読指導のステップは示しているが、(個々の音などの)発音練習には触れていない。もっと読者のレベルと内容のねらいを明確にした特集にしてもらいたい、と要望したい。(この回終り)

【私の記事に対するコメントは原則非公開扱いとさせていただきます】

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