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「小学校の外国語教育」とはなんぞや?

Posted on 2011年12月19日

(1)「英語教育」(大修館書店、2012年1月号)は、「『小学校外国語活動』と『中学校英語』の連携を目指して」を特集している。私の第1の疑問は、「なぜ小学校は“外国語”で、中学校は“英語”なのだ」ということである。文科省のホームページでは、“外国語教育”の項目の中に、“小学校外国語活動”を位置付けている。それなら、“小学校英語教育”とすればよいではないか。“活動”としいておけば、正式な教科ではないから、教員養成や検定教科書の発行などと関係なく進められるという、なんとも姑息なやり方に思える。

 

(2)そんな疑問を感じながら、最初の金森強(松山大教授)「小学校の外国語活動に求められるものは何か」を読んだ。文科省による“小学校外国語活動”の完全実施や移行措置は順調に進んでいる」ことを認めながらも、問題点の指摘もしている。しかしながら、私が最初に提起した疑問の答はないし、「文科省の指導要領に沿った実践こそ必要」と説いている姿勢には賛成しがたいものを感じる。

 

(3)私も長年英語教師をしてきて、「日本人がもっと英語が出来るようになって欲しい」という願いは当然持っている。そのためには、何が障害で、どうすればその障害を除去できるか、ということを真剣に議論しなければならないと考えている。ちょっとくらい“英会話”が出来ればよい、という程度の考え方ではダメなのである。一方では、”早期英語教育反対論” も多い。その理由は様々だが、理論的には説得力がある。文科省のような“羊頭狗肉”の“苦肉の策”では対抗出来るはずがないと思う。

 

(4)“文部省”の時代には、“ゆとりの教育”の方針から、中学校の英語授業時数を“週3時間”に減らし、“足りないのは時間ではない。発想の転換で切りぬけよ”といった指導をした。そして、今度は全体の時間数を増やして土曜日も授業をしろと言う。強制力のある行政の方針がふらふらしていたのでは、教育の効果などとても期待できない。

 

(5)文科省の調査結果(膨大な資料なので平成21年の集計が最新のものだが)によると、平成21年に予定している“外国語活動”の時間数は、6年生で11~20時間が、25.3%(5,435校)で最も多い。授業時数の標準は、“週1回”で年間35回だから、最多の 20時間でも、週1回あるかないかなのである。こんな現状で中学校との連携など問題になるのかと、失礼ながら、この特集を読むのもバカらしくなってしまったというのが正直な気持ちである。

 

(6)現在は、それぞれの地域の状況が多様化しているので、その実情に応じて熱心に英語教育の指導を実践している小中学校もあることを認めながらも、すっきりしない心境であることを付言してこの回を終わりたい。

(浅 野 博)

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