言語情報ブログ 語学教育を考える

「『英語教育』誌(大修館書店)批評」(その6)(英語辞書を愉しむ)

Posted on 2014年2月17日

(1)「英語教育」誌(大修館書店)の2014年3月号の特集は、「英語辞書を愉しむ」です。私は、この特集記事を一読して、今回は“批評”にはならないと思いました。その理由は、次の通りです。

 

(2)「愉しむ」というのは、“各個人の好み”に関することで、他人の好みに口出しすべきではないのが原則だと思います。子供がコンピュータゲームが大好きで、勉強をおろそかにしていたならば、親は、「好きなことばかりしていないで、勉強をしなさい」と叱る権利はあるでしょう。

 

(3)今回の特集の記事は、立派な肩書がある執筆者が、「自分はこういうふうに好きな辞典のことを考えている」と書いているのですから、批判する余地はないと私は考えたのです。また、歴史的に先達の英語辞書に関する記事を紹介しているものもありますが、それがどのくらい事実に忠実に書いているかは、今の私には確認する余裕はありません。ですから、間違いはないと信じています。

 

(4)このように言うと、今回の特集にけちをつけているようですが、英語教員としては、特集の記事のような内容は、「知らないよりは知っていたほうが良い」ことは認めます。ただし、毎日の授業で、英和辞典の引き方や読み方を教えるのに苦労している英語教員にとっては、あまり身近な問題とは思えないのではないでしょうか。このことは、2011年12月号の特集「英和・和英辞典の今~進化を探る~」についても私が書いたことで、拙著『浅野博のブログ放談』(リーベル出版、2013)に再録してあります。

 

(5)最初の記事は、江利川 春雄(和歌山大)「日本の英語辞書を築いた巨匠たち」ですが、斎藤 秀三郎(1866-1929)の “idiomology” の研究を紹介しています。この語は斎藤氏の造語ですが、ウェブスターの辞書には、”the study of idiom” と紹介されているとも書いてあります。

 

(6)私的なことですが、私は旧制中学の1年生の頃(1942)に、五歳上の兄が、『熟語本位英和中辞典』(豊田 實改訂増補版)を持っていたので、時々引いてみたことがあります。この記事にも紹介してありますが、”Mind your own business.” には、「己が頭の蠅を追へ」とあって、私は、英語を学ぶためには日本語をもっと一生懸命に勉強しないとダメだと思ったものでした。

 

(7)私がブログで度々書いていますように、最近の評論家や政治家は、立派な日本語があるのに、わざわざ発音のおかしい英語を使って、いかにも物知りであるような態度を取る人物が多過ぎるように思います。そういうことを批判する記事も欲しくなりました。歴史上の業績に学ぶのであれば、その業績がどう現代と関わっているか、現代の教育の諸問題解決にどう役立てるかに触れても良かったのではないでしょうか?

 

(8)英語教育の観点から言えば、単に古いことを教えればいいのではなくて、それが現在とどう関係しているかに触れるべきでしょう。それが、全ての記事に必要だとは言いませんが、一編くらいは、「英和辞書の先達と現代の英語教育」といった記事が欲しいと私は思いました。(この回終り)

Comments (0) Trackbacks (0)

Sorry, the comment form is closed at this time.

Trackbacks are disabled.