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日本語は悪魔の言葉か?(番外編)

Posted on 2014年10月9日

日本の位置、そして、国際語としての英語の寿命

 

漢字は効率が悪い、日本語は不利ではないか、そういった話をときどき耳にする。そんなことはないよと私自身は思っているが、漢字の歴史についても、中国語についても、ハングルについてもほとんど知識がなくて躊躇していた。が、今回決心して、自転車操業で、アマゾンで資料を買ったり、図書館へ行ったり、インターネットで調べたりして自説を補強して、説いてみた。知識は孫引きが多いが、できるだけ2つ以上の典拠を求めて誤りのないように努めた。

 

1.日本の位置はどう見える

石川九楊氏に、地図を横にしてみると、大陸から見た日本の位置がわかると教えられて、日本地図を横にしてみた。(※写真1)旧樺太はほんとうに大陸に近くて、日本列島も小さく内海を囲んだ出先きのように近い。なんだ、大陸から見ると、瀬戸内海の対岸のように見えるじゃないかといった印象だ。

 

これでは、隋や唐の皇帝が倭(日本)の王が挨拶の使節を遣わすのは当然のことと思ったであろう。一般の人々はもっと親しく付き合うべきだと思う。私たちは実際以上に太平洋に出ている、大陸から離れている、アメリカもそう遠くはないと思い過ぎていると思い直した次第である。

 

関西の人、九州沖縄の人たちは、私たち関東東北の者よりも韓国が近いようだ。忘年会は釜山にしたよなどと言ってくる。中国だって近い感じだろう。

 

これが国家としての付き合いになるとそうはいかない。中国には依然として中華思想(自民族中心主義)が存在し、ごり押しをしてくる。政府には慎重な、毅然たる交渉術を願いたい。が、民間の関係ではもっともっと交流し、学校でも「中国特集」をして、理解を深めたいと思う。

 

2.母語の教科書がない

韓国は1970年に漢字を捨ててハングル化で行く大統領決定をした。しかしながら、韓国の大学では自然科学を初め多くの分野において韓国語の教科書がなく、英語の教科書を使っていることがわかった。

 

多くの日本人がノーベル賞を取ったことで、韓国のメディアは日本に追いつけと激を飛ばしている。そこで何人かの有識者が、母語で論理的に考えることができなくては、独創的な発見・発明はできないと説いている。

 

韓国も英語ではなくて、韓国語で基礎科学教育を行い、自国語で深く考えることをさせたいのだが、翻訳しようにも単語がなくて、すぐには韓国語の教科書が作れないのだ。専門用語の名詞だけでなくて、動詞もうまく訳せないのではないかと推察する。これを行うには漢語に頼るほかない。日本に学んで、漢語は復活せざるを得ないのではないかといった議論になっているようだ。

 

「科学」「物理学」「化学」といった用語はほとんど日本人が作ったもので、韓国も中国もこれを借りて使い、さらに細部の用語、「素粒子」「電子」「陽子」といったものもすべて日本人が作ったもので、韓国語にはそれに代わる訳語はない。従って、中学や高校の自然科学の教科書がそれほど論理的に整備されたものになりえない。基礎科学も大学へ行ってから英語で学ぶことになっているようだ。

 

このような記述をいろいろと読むと、日本人は漢字を使いこなすことができて、いかに幸せなことか、未来が明るいかと思う。

 

3.国際語としての英語の衰退

以前私は、英語教師のポストは、どんどん減っていき、20年後にはほとんどなくなるのではないかと書いたが、「国際語としての英語」の地位も50年後には大きく変わったものになっているだろうと思っている。

 

今回、中国の歴史と漢語の浮き沈みを見てきて、何度も自分が教えてきた「英語」のことを思った。「英語の天下」はいつまで続くのだろうかと。

 

英国100年、米国100年という説がある。イギリスの天下は100年で、第二次世界大戦で終わった。そのあとはアメリカの天下だと考えると、あと40年か50年ぐらいだ。それと前後しておそらく「英語の天下」も終わるのではないかと思われる。

 

英国のグラッドルという研究者は書いている。2050年には世界の言語階層の最上階(大言語)は、「中国語、ヒンデイー語/ウルドー語、英語、スペイン語、アラビア語」となると。

 

すなわち、英語一辺倒ではなくて、外交の、あるいは、交易の場面、場面においていくつかの言語を使い分ける時代がくると言う。世界はなべてそのような視点に立っていて、日本のように中学・高校で英語だけしか教えていない国はほとんどどこにも存在しない。東アジアにも。外国語は英語だけではないことを、英語教師の務めとしてもっと生徒に教えなければならない。それこそ国際理解教育だと認識したい。

 

 (おわり)
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