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浅野:英語教育批評:外国語学習開始の年齢のこと

Posted on 2009年3月19日

 「英語教育」(大修館書店)の2009年4月号の特集は「今年の授業開き〜生徒にこんな<ことば>を投げかけたい〜」である。各執筆者がその経験を生かして工夫をした、自分の生徒に投げかける<ことば>には、感心こそすれ、ケチをつける気はない。「『やる気』という木に『根気』という木を接木して、毎日『ナニクソ』という肥やしをやり続けるていると、勉強の木にいつか立派な実(=成果)がなります」(海木幸登氏、p.10)などは、思わず笑ってしまう。
 ただし、経験の浅い教員や英語教員志望の大学生などが、こういう実例を読んで、そっくりそのまま真似することは止めたほうがよいのは当然であろう。自分の生徒は他の生徒とは違うということを意識して、その生徒にふさわしい<ことば>を経験を積みながら考えていくことがことが大切なのだ。
 ところで、この号からピーター・ロビンソン教授(青山学院大)が、第2言語の習得について1年間連載されるとのこと。第1回は、学習開始年齢と外国語教育の成果の度合について、カナダの “immergion program” と”Barcelona Age Factor (BAF) project” の紹介をしている。前者は日本でも実践の記録があるが、やはり一般化するには特殊過ぎる。後者は、このことを取り上げた書物があるようだが、8歳の児童と 11歳の児童の比較では、週3時間の授業をして、聴解テストでは差がないものの、クローズ・テストでは、11歳児のほうが成績が良く、全体的により速く、より高い英語のレベルに到達したという。11歳くらいになると、8歳児よりは知的能力が高くなるので、特に「読むこと」の能力を要求されるクローズ・テストでは成績の良いのはむしろ当然であろう。母語のテストで、小学2年生が5年生より成績が良かったら、異常事態である。
 日本ではやたらと英語を早く学ばせようとする傾向があるが、せいぜい小学校の5,6年でよいのだ。しかしながら、年間で35時間の授業ではほとんど期待はできないのではないか。その点、文科省の管正隆氏の連載記事(小学校「外国語活動」発進!p.39)は問題意識が薄いように感じる。「外国語活動」と言うからには、他の言語でも、「英語ノート」に当たるものを作成しているのか?どういう外国語にどのくらい予算を割いているのか?こういうことを明確にしてから、「外国語活動」を語ってもらいたいと思う。
(浅 野 博)

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