言語情報ブログ 語学教育を考える

浅野式辞典:「れあ・めたる」(レア・メタル)

Posted on 2008年3月5日

「まれなメタル」?ああ、オリンピックのメタルね。あれはなかなか取れないからね。えっ、違うの!「古いパソコンから取り出す金、銀などのこと」だって?そんなら高く引き取ってくれよ。

★★浅野式「でたらめ現代用語辞典」Asano's Japanese Dictionary of Current Word★★

浅野:英語教育批評:「学習英文法」を探る

Posted on 2008年3月4日

 英文法を英語学習の中心に置いた次の2冊を紹介したい。
(1)田中茂範『文法がわかれば英語はわかる』(日本放送出版協会、2008)
 これは魅力的なタイトルである。しかし、多くの高校生は手にとってはみても途中で投げだしてしまうのではないか。例えば、「現在」の話をしようというのはとっつきやすいが、そこには「単純形」「テンス」「アスペクト」といった用語が多用されている。「単純形」はすぐに「進行形」「完了形」などに話が発展する。つまり、文法用語はかなり知っていることが前提とされている。努力はしてみたが、行き詰ってしまったが、意欲はあるという学習者でないとついていけない気がする。もっとも著者は、NHK で出演されたし、その番組はDVDでも発売されるようなので、視聴してからこの本を読めば、もっとわかりやすくなるであろう。
(2)斎藤兆史『英文法の論理』(日本出版放送協会、2008)
 このタイトルでは、気軽に手を出す学習者はいないであろう。そこで表紙の帯には「英語学習の王道!」とある。「英会話」中心の指導法や教材を厳しく批判してきた著者が、ではどのように学ぶべきかを文法を中心に具体的に述べている。ただし、欲張りすぎている感があって、例えば、名詞ではその5種類を示し、時制では、現在・過去・未来のほかに7種類が羅列される。多くの学習者はこのあたりで脱落してしまう。名詞なら「数えられる名詞」「数えられない名詞」くらいの区別がやっとなのである。本書ではヤコブソンの考え方を「タテ軸」「ヨコ軸」と置き換えて説明し、それに基づいた練習問題も示している。教室ではただ「自分の言いたいことを言ってみましょう」などと指導している教師にはよく実践してほしい方法である。
 外国語を知的に理解し使えるようになることは、誰にでも可能とは限らないとすれば、「皆が英語を話せるように」というこの国の英語教育政策は根本的に考え直す必要があるだろう。指導要領を手直しする程度ですむことではないのだ。
(浅 野 博)

浅野式辞典:「もくし」(目視)

Posted on 2008年2月27日

 「(航行している船が別の船などを)目で確認すること」だったが、平成では、次のような同音意義語として使われる。
→「黙視」(相手を黙って見ていること)
→「黙止」(黙ってそのまま放置すること)(『平成悪魔の辞典』より)

★★浅野式「でたらめ現代用語辞典」Asano's Japanese Dictionary of Current Word

浅野:英語教育批評:「学習英文法」とは?

Posted on 2008年2月26日

 新指導要領(中学校英語)では、「文法指導も重視せよ」ということで、「語順や修飾関係などにおける日本語との違いに留意して指導すること」と注意をしている。この直前では、「用語や用法の区別などの指導が中心とならないように配慮し…」ともあるので、「日英語の違いを文法的に説明せよ」ということには直結しないかもしれないが、そう思われても仕方がない。このあたりは5月には出るとされる解説書でわかりやすく説明してもらいたいものだ。
 英語の面から言うと、英語学と学習英文法の接近を図る試みは「英語青年」(2005年6月号、研究社)の特集でなされている。英語学、言語学の専門家9氏が、それぞれ視点を変えて論じているのだが、私が疑問に思うのは、「学習英文法」とはどういうものか、問題点はないのかといった議論がどこにもないことである。本屋の受験参考書売り場では、いくらでも「英文法」の本は見つかるが、それらは程度、説明の仕方、用語などがばらばらである。
 上記の「英語青年」の記事では、
 Susan asked Bill to leave.
 という文では、to leave の意味上の主語は Susan と Bill のどちらにもなり得るとしているが、Susan が意味上の主語になることまで教える必要はない。
 Susan asked Bill if she could leave.
がわかれば上出来であろう。
 また、語順については、次のような例を示している。
 a) The fact is that nobody knows.
 b) Nobody, the fact is, knows.
 c) Nobody knows, the fact is.
 a は高校生に必要でも、 b と c のいずれも可能だと語順の説明で言われたら、生徒は混乱するばかりだ。この特集では、金谷憲編著『学習文法論—文法書・文法教育の働きを探る』(河源社、 1992)への言及くらいしてほしかった。ここには「英文法指導」の基本的な問題点が洗い出されている。さらに継続的な研究や実践が望まれるわけだ。
(浅 野 博)
 

浅野:英語教育批評:「新指導要領(案)」の問題点

Posted on 2008年2月19日

 2月15日に新指導要領がやっと公表された。中学校(英語)について次の3点を問題にしてみたい。
(1)総括目標では「…聞くことや話すことなどの実践的コミュニケーション能力の基礎を養う」が、「…聞くこと、話すこと、読むこと、書くことなどのコミュニケーション能力の基礎を養う」となった。「読み書き」が軽視されないようにとの配慮であろうが、これまでは「各学年とも、2の(1) 言語活動のうち、特に聞くこと及び話すことの言語活動に重点を置いて指導すること」としていたのだから、「読み、書き」が軽視されても当然だったのだ。4技能を示したのはよいが、「…など」で何を想定しているかは、解説書が出るのを待つよりない。
(2)単語数については、「週4時間」になるので、「900語程度」を機械的に「1,200語程度」にした。そして、指導上の注意として、「…運用度の高いものを用い、活用することを通して定着を図るようにすること」とある。これではすべての単語について、発音、綴り、意味、用法まで定着させることになる。「聞いてわかる」「文字を見てわかる」といった「理解語彙」の増加を図らないと指導要領が示す言語活動などはうまくこなせないはずだ。
(3)「日本」「日本人」を意識させる意図は前回と同じだが、今回はさらに「日本語」との違いを意識させている。
 「音声指導に当たっては、日本語との違いに留意しながら、…」は、当然なことではあるが、「日本語音声学」を実践的な見地から学ぶ機会が英語教員にあるだろうか。教員養成とも関係する大きな課題だ。
 文法事項についても、「また、語順や修飾関係などにおける日本語との違いに留意して指導すること」とある。英語教員は日本語の文法を知らず、国語教員は英語が嫌いだということをよく耳にする。これが事実であれば、適切な指導はほとんど望めない。
 また「道徳の指導」とも関連させよとの指示があるが、余計なお世話だと思う。異言語を学ぶ姿勢がしっかりしていればよいはずだ。
(浅 野 博)