言語情報ブログ 語学教育を考える

浅野式辞典:「せきにんりょく」(責任力)

Posted on 2009年9月14日

 選挙で大敗した政党の総裁・総理による造語。したがって広辞苑にも記載がない。現在はもっぱら裏の意味で使われている。「他人のせいにする;判断を誤る;負け惜しみを言う(こと)」のように。例:「やつは“責任力”があるから、信用できないよ」

浅野:英語教育批評:“官僚”と英語教育のこと

Posted on 2009年9月10日

“官僚”と英語教育のこと
(1)政権交代が実現して、「官僚支配から政治家主導の政治」になると騒がれている。しかし、司法、行政、立法の三権分立の考え方からすれば、内閣は行政に携わるが、すべての与党議員が行政に関与するわけではないであろう。また、全く官僚のいない行政も考えられない。
(2)政治問題はともかく、“官僚”のすべてが悪いわけではない。昔から官僚は上からの命令に従順で、間違いのない仕事ぶりは信頼ができたのだ。しかし、最大の欠点は、改革の意欲が封じられていることだ。本心では「よくない」と思っていても、法律を変えようとか、新しい方法を探ろうということをしないし、できない。そのうちに、不満が鬱積して、手抜きとか、ごまかしとか、さらに悪いことまでするようになってしまった。
(3)英語教育では、こういう官僚の問題はどう関わっているであろうか。まず「先輩の決めたことは間違っていたとは言わない」という悪弊が文科省にもある。学習指導要領の内容を変更する場合にも、「前の方針が間違っていた」とは言わない。英語の授業時間数を週4から3にした場合でも、「発想の転換によって同じような効果をあげられる」といった言い訳をする。全体的な学力低下が社会問題になって、「ゆとりの教育」を改めて、時間数の増加を図っているが、省内の誰かが謝罪したとか、処罰されたという話は聞かれない。
(4)こういう馬鹿げたことを避ける手っ取り早い方法は、指導要領の法的拘束力をはずすことであろう。文科省が、学校の多様化を進めながら、画一的な教育内容を強制する指導要領を存在させていることに大きな矛盾があるのだ。地方分権の観点からも、指導要領は1つのシラバスを示すものでよい。各地域では、それを参考にもっと優れた、地域にふさわしいシラバスを作ればよいのだ。
(5)法的拘束力をはずすもう1つの利点は、英語中心の中高の教育が多様化して、他の外国語も同じように取り上げられていくであろうということだ。企業の「もっと話せる英語教育を」という声だけを聞くのではなく、地域や学習者のニーズを考慮したカリキュラムの構築と実践が可能になるはずだ。各地の教育委員会ももっと自主性をもって対応すべきだし、それが可能になると考えたい。(浅 野 博)

浅野式辞典:「れんりつないかく」(連立内閣)

Posted on 2009年9月7日

 公衆便所で男性が横に並んで小用をたし始めたのが起源。高校生たちのぼやきは:
A:どうして政治用語は数学と関係があるのかな。「連立方程式」とか「内角」とか、おれは不得意だ。
B:「連立がない核」って何?物理でも習ったことがないよ。

浅野:英語教育批評:英語教育と「語法(研究)」のこと

Posted on 2009年9月3日

(1)言語を教える場合には、その言語の「語法」や「語法研究」が重要であることは否定できない。「語法 (usage)」は、「言葉の使い方」または「使われている状態」のことだ。「ことば」は一筋縄ではいかない生き物なので、その研究は大事だが、学習者に必要な“語法の知識”とは別なものと考えなければならない。
(2)ごく一般論だが、中学の英語教師は指導法に関心が強く、高校の教師は語法に強いと言われたものである。生徒の学習段階から言っても当然の傾向かも知れない。語法に関心があるのは悪いことではないが、「こだわり過ぎる」としたら、あまり感心できない。
(3)例えば、「…に遅刻する」という言い方では『ジーニアス英和』では、前置詞はfor, to, with が示してあって、例文では、「学校に遅れる」は”for school” 「支払いが遅れる」は “with the payment” を示している。『フェイバリット和英』では、「彼は約束の時間に遅刻してきた(He came late to the appointment.)」を示している。前置詞にこだわる教師は、こういう区別を厳しく教えて、試験問題にも出したりする。
(4)しかし、“コミュニケーション”の視点からは、to でも for でも通じる場合が多い。私が昔教わったアメリカ人の先生は、 “Don’t be late to class.” と言っていた。こういう点では日本語のほうが、許容度が大きい。母語の場合は、お互いに“ことばを超えた”理解し合う力が働くから、特に「話しことば」では、「どちらでもよい」という姿勢が強くなる。したがって、英語のような異言語を学び始めて、語法に厳密な指導を受けると、何かすっきりした気分になって、自分が教師になって教える立場になると、上記(3)の教師のようになる可能性が大きい。
(5)英語教育で“コミュニケーション能力”を伸ばそうというなら、正しい前置詞を選ぶような試験問題ではなく、ある程度の長さの英文を書かせて、「何を伝えようとしているか」「それが英語母語話者にどこまで通じるか」という観点から採点するような配慮が必要であろう。
もっともこの問題は、昔から “Accuracy or Fluency?”(正確さか、流暢さか)ということで論じられてきたのである。議論をしてしっかりした結論を出すということを嫌う日本人の性格が無駄な時間の経過を生み出しているのだと思う。(浅 野 博)

浅野式辞典:「せいけいたい」(制携帯)

Posted on 2009年8月31日

 「制帽」「制服」のように、中・高生にふさわしい手を加えた携帯電話のことだが、神戸の私立中学が導入を計画中とのこと。ある高校生は、「おれなんかセックスはいつも持ち歩いているよ」と言っていた。