言語情報ブログ 語学教育を考える

浅野式辞典:「バラマキ」(ばらまき)

Posted on 2008年9月27日

 「ばらまき」で何を連想するかを中学生に書いてもらった。
A:節分の豆まき。試験の点数もあのくらい“ばらまいて”くれると嬉しい。
B:バブル期の小遣い。3人の兄弟にお父さんがお小遣いを“ばらまく”ようにくれた。今は1円玉もばらまいてくれない。
C:故郷創生基金。1億円ずつ“ばらまいた”首相がいた。今は“ばらまいても”5万円ずつ位らしい。

★★浅野式「でたらめ現代用語辞典」Asano’s Japanese Dictionary of Current Words and Phrases Flippantly Defined in Disorderly Order★★

浅野:英語教育批評:流行語大賞?

Posted on 2008年9月11日

 福田首相の「あなたとは違うんです」が今年の流行語大賞になるのではないかとマスコミが騒いでいた。すぐに忘れ去られる流行語なのだから、どうでもいいけれど、もう少しましな議論をしてもらいたい。政治的流行語ならば、昨年の宮崎県知事の「(宮崎を)どげんかせんといかん」は意図が明確でよかった。
 首相の発言は、辞任会見の際に、記者からの「いつも首相の発言は他人事のように聞こえるが、今の辞任理由もそのように聞こえた。そのことをどう思うか」という質問に答えたものだった。珍しく怒った口調で、「私は客観的に自分を見ることができるんです。あなたとは違うんです」と述べたわけだ。
 あるテレビキャスターは、「この“あなた”は国民を指している。つまり国民を見下した発言だ」と述べていたが、少し飛躍がありはしないか。日本語では、二人称の(代)名詞の使い方が複雑で、特に“あなた”は難しい。漢字では「貴方」とか「貴女」と書くように、本来は目上の人への敬意を含む言い方だったが、現在では「対等」もしくは「目下」の者へ使うべきものとされている。恐らく初対面であろう記者に対して使えば、「上からの目線でものを言っている」と感じ取られてもやむを得ないとは思う。
 友人同士では、「お前とは違うよ」はよく聞かれる。「おっ!ゴールドカード持ってるのかよ」「そうさ。お前とは違うよ」という会話では、明らかに優越感を含んだ言い方だが、相手を知っている場合だから許される。
 首相の発言のほとんどは、「他人事のように聞こえる」というのは確かで、それがわからないようでは、「自分を客観的に見ることができる」などと言えたものではない。教員の場合で譬えてみよう。担任のところへ、数人の生徒が来て、「試験の時にとてもカンニングが多いので、なんとかしてほしい」と訴えられて、「そうね、私もカンニングは良いことだとは思いませんよ。生徒もね、めいめいが悪いことだという自覚をもって試験に臨んでほしいね」と答えたら、生徒たちは納得するであろうか。
(浅 野 博)

浅野式辞典:「せいぜい」(精々)

Posted on 2008年9月8日

福田元首相がオリンピックの選手を前にして言った「せいぜい頑張ってください」が評判が悪い。首相は「どこが悪い」と思い、批評家は「激励にはふさわしくない」と言う。かくして「国語辞典」はまったく無視される。引いてもあまり役に立たないけどね。

★★浅野式「でたらめ現代用語辞典」Asano's Japanese Dictionary of Current Word★★

浅野:英語教育批評:“感動”の押しつけ?

Posted on 2008年9月4日

 首都圏のテレビ局では、日本テレビとフジテレビが、毎年夏に2日がかりの長時間放送を実施する。日本テレビのほうが元祖のようだが、後発のフジのはいりきりようもすごい。今年などは、裏番組をぶっ飛ばせとばかりに対抗意識を燃やしていた。日ごろ報道している、「エネルギーの節約」などどこへ行ってしまったのだろうか。
 日本テレビのは、「チャリティ募金」と「感動番組」が売り物だ。だいたい「募金」を「寄付金」の意味で使う誤用を広めたのもこの番組だ。アナウンサーが「たくさんの募金を持って来てくださいました」「こんなに募金が集まりました」などと繰り返している。最新の『広辞苑』でも、「募金」は「寄付金を集めること」としか定義していない。
 「感動番組」では、身体障害者や難病に悩む人たちが、どんなに努力をして生き抜こうとしているかを紹介する。もちろん、私も個々のこういう状況の紹介は真剣に受け止めたい。でも、あまりにも数が多いと個々の印象が薄れてしまう。こういう番組は、日ごろの放送で適宜取り上げるべきではないか。「それもやっています」と言うならば、くだらない深夜放送の1つでも止めて、再放送をしたらどうか。深夜(再)放送では、NHKのほうがはるかに有益なものが多い。おまけに、日本テレビでは、タレントなどによる演出過剰のマラソンがある。こんなものを本当の感動番組にぶつけるべきではない。おまけに、後日の放送では、またその“感動”をこれでもかと押しつける。
 この点は、英語教育も反省すべきことがある。中・高校では、「教科書に感動教材を」という声が強い。私は、英語教室で“感動教材”を扱うな、と言うつもりはないが、そもそも感動教材は、読んだ個人がその感動に浸ればよいので、そのあとの練習やテストには向いていないと考えている。どんな面白い推理小説だって、「あとでテストをする」などと言われたら、興味が半減してしまうであろう。もっと、教材の質と目的を意識した指導を心掛けるべきだ。
(浅 野 博)

浅野式辞典:「やかましい」(喧しい)

Posted on 2008年9月1日

遠山の金さんがお裁きの場面で用いたのが語源とされる。罪人の言い訳を聞いて、金さんは「やかましーやい、てめーども!」と一喝して罪状をあばく。したがって、ある大臣の「消費者がやかましい」の真意は「消費者はだまれ!」だ。

★★浅野式「でたらめ現代用語辞典」Asano's Japanese Dictionary of Current Word★★