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浅野式現代でたらめ用語辞典(再開その15)

Posted on 2013年3月22日

「サイバー攻撃」

「サイバー」(cyber)は「コンピューターの」という意味だが、特定の国が悪用すると、相手国の市民生活に大影響を与える恐ろしい武器となる。

知ったかぶり老人:なに?「サイパン攻撃」?馬鹿な。あそこから飛び立った米軍の B29 が日本人を苦しめたんじゃよ。

中学生ギャル:うちのお母ちゃんは、「銀行からお金を下ろせなくなった」って大騒ぎしていた。たいしたお金じゃないんだから、たんす預金しとけばいいのに。

くそ真面目男子大学生:これは恐ろしい武器です。原子爆弾などを使った戦争はどちらの国も滅びますが、“サイバー攻撃”は攻撃する側になんの被害もなく、相手側の市民生活に大混乱を起こせるのです。日本では総選挙でのコンピューター利用に大騒ぎしていますが、“サイバー攻撃”に対する自衛権の行使はどうなっているのでしょうか?(この回終り)

「英語教育批評」(その66の2)(「新学期のための準備」(続き)

Posted on 2013年3月21日

(1)大塚謙二(北海道壮瞥町立壮瞥中学)「デジタル教材を本当に効果的に活用しているか」は、仰々しい題名で、「効果的に活用などしていないくせに」とでも言っているような感じが私にはします。しかも最初の見出しには、「見切り発車が必要な ICT を活用した授業」とあります。最近は「見切り発車」と言うと、多くの乗客が窓や入口にぶら下がっているような満員列車が発車してしまうようなインドからのテレビ画面を連想します。大塚氏は、実際に学校を訪問してみると、最新の機器を眠ったままにしている学校が多く、そういう場合は、準備ができるまで待っていたら永久に使えないのだから、“見切り発車”が必要だということ言いたいようです。

 

(2)私は“見切り発車”を強要しているのは、文科省だと思うのです。予算があって各学校に必要な機器を配ることが出来るのであれば、講習会を開いて、必要な準備をさせるべきでしょう。大塚氏のここで説いていることに全て反対するつもりはありませんが、説明がやや乱暴で分かりにくい点があるのです。私の持論として、「英語教育」誌の記事は教職の未経験者にも分かるように書いてもらいたいと思っています。

 

(3)増渕素子(東京都渋谷区立原宿外苑中学)「指導要領改訂最前線を進む生徒たちに、どのようなケアが必要か」も、ものものしい題名で、生徒がまるで戦争中の軍隊みたいです。「指導要領の改訂の際に指導上注意すべき問題点」といった分かりやすいタイトルでは何故いけないのでしょうか。“ケア”も日常語としては、「高齢者の介護」について使うことが多いと思います。記事の内容は多くの統計資料を基に真剣に論じているのですから、分かりやすい題名にして欲しかったと思います。

 

(4)中野達也(東京都立白鴎高校)「高校新指導要領導入にあたり、これだけはやめようと思っている3つのこと」の“3つのこと”の最初は、「1. 旧課程にあてはめて考えるのは止める」で、「そんなこと当たり前ではないか」と言いたくなります。ちなみに、あと2つは、「2. 先生ばかり話し続ける授業はやめる」、「3. あれこれ迷うことはやめる」で、指導要領とは関係なく、やらないほうが良いことだと思います。ことば尻 をとらえるようですが、表題の「新指導要領導入」もおかしい言い方です。指導要領は教員が“導入”するものではなく、むしろ教員に“押しつけられるもの”と考えるべきです。記事の内容は、指導上の留意点を真面目に論じているものだけに、もう少しことば遣いに注意してもらいたいと思います。

 

(5)柴田まり(山形県立楯岡高校)「『英語で授業』をどうはじめるか」で、やっと分かりやすい表題になりました。内容も、生徒のほとんどが進学しない農業高校での経験談や、「英語で授業をやってみませんか」と呼びかけた時の一人の同僚が応じてくれた反応などを紹介していて、分かり安いと思います。欲を言えば、もっと英語の実例を示して欲しかったと思います。

 

(6)亀谷みゆき(岐阜県立東濃実業高校)「観点別学習状況の評価をどう実施するか」は、「観点別学習状況の評価とは?」ときちんと定義をし、その実践方法と問題点を述べている親切な記述です。細かい点では、生徒向きに、”Do you think animals can think? Why / Why not do you think so? と書いていますが(p. 35)、不正確な英語です。1つは、”closing quotation marks” が無いこと。後半は、”Why not think so?” とすべきでしょうが、口語的な表現であることに留意しなければなりません。

 

(7)田地野 彰(京都大学)「大学で専門英語を指導することになったら――ライティング指導を中心に」は、タイトルだけを見ると、中高の英語教員には、「専門英語とは何だろう」と思う者もいることでしょう。この記事では、“専門英語”とは何か、から始まって、“アカデミックライティング”とか、“ムーブ(move)”(文章の展開において特定のコミュニケーション機能や目的を果たすまとまり)といった専門用語の解説やその利用方法を丁寧に説明しています。英語教員であれば、ESP (English for Specific Purposes)(特別目的の英語) くらいは知っておくべきでしょうが、実践の方法は、大学や学部によって大きな違いがありますから、中高の英語教員は必要に応じて学べばよいことだと思います。 (この回終り)

浅野式現代でたらめ用語辞典(再開その14)

Posted on 2013年3月8日

「いくじい(育爺」

 父親が子育てを手伝ったりするのを「イクメン」と言っていたと思ったら、「祖父が孫を育てること」を「イクじい」と言うらしい。

知ったかぶり老人:戦争中は、戦争に協力しないやつは、“非国民”とか、“いくじなし”と言われたもんだ。今は、“イクジナシ”は喜ばれるのか?何?“イクジイ”?そんなもんはおらんよ。

中学生ギャル:うちのおじいちゃん、もう少しボケている。「千五百万円までは税金がかからんからお前にやってもいいぞ」なんて言うんだ。そんなお金あるはずないのに。私は千五百円お小遣い貰ったほうが有難いよ。

迷える女子大生:男が子育てを手伝ってくれるのを“イクメン”とか言っていたけど、そんな男いるかな?いても“イケメン”でなかったりして。私は結婚しても子どもは欲しくない。おじいちゃんもいないしね。(この回終り)

「英語教育批評」(その66の1)(「新学期のための準備」のこと)

Posted on 2013年3月7日

(1)「英語教育」誌(大修館書店)の2013年3月号の特集は「新学期前に確認しておきたいこと」です。2学期でも3学期でも、前の学期で出来なかったことを反省して、授業の始まりに備えるということは必要であり、大切なことだと思います。したがって、この特集のテーマの設定には異論はありません。経験者が何を語るか興味をそそられるテーマです。

(2)冒頭の記事は、塩井博子(栃木県宇都宮市立上戸祭小学校)「『外国語活動』を担当することになったら」です。これまで8年間の「外国語活動」指導の経験者の書いたものですから、同意出来ることが多いであろうと思ったのですが、すぐに疑問に思ったことがあります。「『外国語活動』の目標はコミュニケーション活動の素地を育成することであり、スキルの定着ではない」と述べているからです。

(3)小学5,6年生に、昔流行った“パタンプラクティス”のようなことばかりをやらせるのは確かに無謀ですが、ある程度“スキル”を身に付けないと、英語でのコミュニケーションなど出来ないと私は考えます。冒頭の記事であれば、「外国語活動は英語を教えることだ」と単純に考えがちな小学校の教師に対して、「“外国語活動”とは何か?」「なぜ“英語活動”ではないのか?」といった基本的な問題から説いて欲しかったと思います。

(4)東村広子(埼玉県所沢市立所沢中学)「小中の滑らかな接続を目指して」は、「滑らかな接続のための3つのポイントを挙げています。「(1)外国語活動の把握と生徒の現状の見取り」がその1つですが、新入生にアンケート調査などをして現状把握に努める方法は堅実です。ただし、その中学へ集まる小学校の数が3,4校にもなれば、現状分析も大変難しいことでしょう。「(2)音と文字のつながり」まで視野に入れると指導方法が絡んで、さらに大変です。どうやってその“大変さ”を克服するのかまで論じて欲しいと思いました。

(5)知見晴弘(山梨県大月市立第一中学)「中学校で増えた1時間を有効に使っているか」では、実例として、「フォニックス指導の充実」と「アウトプットの機会を増やす」を示しています。“フォニックス”は、それなりの考え方と教材を前提にするものなので、同じ検定教科書を使って、“フォニックス”を深めるのには無理があるのではないでしょうか?“アウトプットをさせる”ことは必要でしょうが、生徒の能力差が大きく出る面ですから、個別指導への配慮が欠かせません。そういう困難点にも言及して欲しいと思いました。

(6)肥沼則明(筑波大附属中学)「教科書(教材)のここをチェックしておく」は、「『いつ』『何』をチェックするのか?」に始まって、教材ばかりでなく、「指導過程のチェック」にまで言及しているのは親切な配慮です。「教科書の本文を詳細に読んでみると、本来であれば新出の文法項目として扱ったほうがいいような重要な表現が潜んでいることがある」とありますが、それを知るのは簡単ではないと思います。

(7)なぜならば、検定教科書には著者や編集委員会などの“意図”が含まれていますから、それを知るためには教科書会社が発行する「指導書」とか「マニュアル」といったものを読まなければなりません。ところが、「指導書」などは1学年分でも2,3万円以上もするので、入手しにくいのです。そういう困難点に加えて、文科省の予定変更で、新学習指導要領の実施がこれまでの予定とずれていることなども指摘してもらいたいところです。同じ教科書を使っている学校の教師だけが研究会を持っても、どうしても視野が狭くなります。この問題の解決には、教科書採択制度を見直すなど大問題の解決が必要なのです。(以下次回に続く)

(8)訂正とお詫び:前回の「英語教育批評」では、「センター入試の制度」のことを問題にしました。その中で、「共通1次試験」の始まった年を「昭和49年(1974)」と書きましたが、「昭和54年(1979)」の間違いでした。指摘してくれた久保野雅史氏(神奈川大)に感謝し、読者の方々にお詫びして訂正いたします。

浅野式現代でたらめ用語辞典(再開その13)

Posted on 2013年2月14日

「バレンタインデー」

 ご存知「チョコレートの日」。悲喜こもごもの有様にテレビまで一緒になって大騒ぎ。

知ったかぶり老人:なに?また誰かばれたんか?昔は「密会」と言ってな、ばれんように会っていたもんじゃ。わしだって、若い時はもてたぞ。

中学生ギャル:うちの姉ちゃん本命からチョコをもらったって大喜び。私なんか上げるだけ無駄だから、何もしない。本当は泣きたいくらい寂しいよ。

くそ真面目大学生:バレンタインデーは殉教者の日です。チョコを上げたの、貰ったのと大騒ぎする日ではありません。世界にはチョコどころか、毎日のご飯さえ食べられない子どもが沢山いるのです。日本人はクリスマスでもバレンタインでも、どうしてこんなに馬鹿騒ぎをするのでしょうか。僕には理解不能です。(この回終り)