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日英語言葉のエッセー(その11)(“ドラえもん”マンガの考え方)

Posted on 2014年6月9日

(1)何日か前に、TBS のラジオ番組で聞いたのですが、日本の人気漫画の“ドラえもん”は東南アジアの諸国などでもとても人気があるようです。ドラえもんがポケットから出す、“竹コプター”とか、“どこでもドア”は新しい冒険の世界へと導いてくれますから、特に子どもたちには夢と想像力を与えると考えられているようです。

 

(2)ところが、“ドラえもん”が住んでいる家の男の子“野比のび太”は、学校の勉強は好きではなく、かなりだらしない生活を送っています。しかし、“ドラえもん”にお願いすると、“竹コプター”や“どこでもドア”で、いろいろな冒険を経験できるのです。子どもばかりではなく、大人にも好評のマンガで、ここ4,50年の間にテレビで放映されたばかりでなく、映画にもなりました。作者は、藤子不二雄氏です。

 

(3)日本の小学生などは、そういう“のび太”に自分を重ね合わせて、わくわくしながらこのマンガを楽しんでいるとのこと。ところが私の聞いたところでは、このマンガの評判が悪いのはアメリカだというのです。特に親の世代には不評で、「独立性のない子どもを主人公にしたマンガは読ませない」と強硬なようです。

 

(4)アメリカといっても、国土は広大で、移民も多いので一概には言えないと思いますが、マスコミの力が強いので、「こんな自主性のないマンガはダメだ」ということになれば、同調する国民が多いこともうなずけます。日本では、「面白ければ何でもいい」というテレビ番組の制作姿勢がありますから、“ドラえもんマンガ”に批判的な声を私は聞いたことがありません。

 

(5)このマンガの登場人物には、“ジャイアン”と呼ばれる小学生にしては身体の大きな男の子がいて、のび太はよくいじめられます。こういう“いじめっ子”に当たる英語は、“bully” というようです。“のび太”は、時には“ドラえもん”の力を借りて見事に復讐をします。“いじめられっ子”は、そんなところで、うさをはらしているのでしょうか?そう考えると、このマンガの作者は現代の小学生たちが直面している問題を提起してきたと考えることが出来ます。

 

(6)今日の先進諸国の中では、若者の自殺者が最も多いとされる日本ですが、学校長や教育委員会は、「いじめがあったとは認識していない」などと責任逃れの弁解をします。そういう人たちには、“ドラえもんマンガ”をよく読み直してもらいたいと思います。

 

(7)私的なことになりますが、私は筑波大の在任中に短期間ですが、“ドラえもんマンガ”の一部を教材として使用したことがあります。例えば、「どこでもドア」は英語でどう説明したらよいか、といった質問をしました。英作文の力の弱い学生は、“everywhere door” とだけ書いたりしました。英語の得意な学生は、“The magical door through which you can visit any place in no time” とした例がありました。文句なしの合格点です。

 

(8)なお、“ドラえもんマンガ”は、“You Tube” で幾つかの場面を見ることが出来ます。私は、フランス語版は探せましたが、英語版はまだ見ていません。どういう英語にしているかを確かめましたら、いずれまた取り上げたいと思います。(この回終り)

日英語言葉のエッセー(その10)(“熟語”の定義)

Posted on 2014年5月26日

(1)だいぶ以前のことですが、あるテレビの番組で、中学、高校レベルの入試問題を模した問題を出して、若いタレントたちに答えさせていました。出題の中には、「次の空所に一から九までの漢数字のいずれかを入れて熟語にしなさい」というのがありました。例:「夫婦は( )心同体」→「一心同体」

 

(2)ところが、ある女性のタレントが、「“熟語”って何ですか?」と尋ねました。司会者が何と応じたかは覚えていませんが、急に尋ねられたら困る人が多いと思います。私もすぐには思い付きませんでした。そこで、広辞苑で“熟語”を引いてみますと、「①二つ以上の単語または2字以上の漢字が結合してできた語」として、“夜明け”、“買物”、“読書”などを例として示していました。2番目の定義としては、「②(idiom)一定の言いまわしで特有な意味を表す成句、慣用句」とありました。しかし、“買物”や“読書”を“熟語”と感じる人はあまり多くないだろうと思いました。

 

(3)2番目の定義のように、「一定の言いまわしで、特有な意味を表す成句」ならば、「そうだろうな」とは思いますが、“特有な意味”とか、“成句”の例はすぐには思い付かない人が多いでしょう。英々辞典(オックスフォード現代英々辞典)で、“idiom”を引いてみましたら、“a group of words whose meaning is different from the meanings of the individual words” とありました。(試訳)「幾つかの単語の集まりで、その意味するものは、その集まりの個々の単語が意味するものと違うもの」ということでしょうが、「分かりやすい」とは言えない気がしました。「意味の定義」は簡単ではありません。

 

(4)話は変わりますが、今朝(2014年5月25日)のフジテレビの 「新報道2001」では、終りの方で、政治問題と離れて、「日本にいるイギリス人一家が、“日本を食べる”とか、“東京を食べつくす”と言って、日本食の素材を丹念に探し廻っている話でした。父親のイギリス人は、コックとしての経験があるようですが、海苔1枚にしても、「産地によって味の違いがある」と言っていました。

 

(5)このイギリス人の書いた本は、マイケル・ブース著/ 寺西のぶ子 訳『英国一家、日本を食べる』(亜紀書房、2014)として出版されているようです。インターネットの書き込みによりますと、「日本食の良さをイギリス人に教えてもらった」と、概して好評ですが、「訳本はかなり省略があるので、英語の分かる人は英語版を読んだほうがいい」というコメントもあります。私は、まだどちらも読んでいませんので、これ以上この問題は論じられないことをお断りしなければなりません。

 

(6)テレビの画面では、マイケル・ブース氏の英語は、ほとんど日本語に吹き替えられていましたので聞くことが出来なかったのですが、“eat Japan” (日本を食べる)とか、“eat Tokyo completely”(東京を食べつくす) といった表現がどこまで普通の英米人に通じるのかを知りたい気持ちがありますので、少し時間をかけて調べて見たいと思っています。(この回終り)

浅野式現代でたらめ用語辞典(再開その34)(サルコペニア)

Posted on 2014年5月21日

加齢と共に筋力が衰えるのは仕方がないとしても、炭水化物を取り過ぎると、“メタボ”になっていろいろな病気を併発する危険性がありますが・・・

 

耳の遠い、知ったかぶり老人:何?“サルの腰掛”か?そりゃ、身体にいいよ。猿が腰掛られるくらいでっかいキノコだからな。

 

中学生ギャル:うちの母ちゃんは、「毎日こんなに働いているのにどうして太るんだろうね?」なんて言っている。あたしが、「働いていても、そんなに甘いものばっかり食べちゃだめだよ」と言うのに、止めないんだから。

 

真面目男子医大生:“サルコペニア”というのは、“筋肉の衰え”を意味する医学用語として作られたと教わりました。加齢とともに筋肉は衰えますが、スタイルばかり気にして食事を制限していながら、甘いものは結構食べる若い女性も危険です。健康志向は見かけだけではダメなのです。(この回終り)

「『英語教育』誌(大修館書店)批評」(その9)(授業内容の定着)

Posted on 2014年5月19日

(1)「英語教育」誌(大修館書店)の2014年6月号の特集は、第1が「授業内容の定着率をアップする」で、第2が「英語外部試験の実態に迫る③TOEIC テスト」の2つです。私は個人的には、「アップする」のような言い方を好みません。コンピュータの世界では当たり前のように使われますが、英語教育の観点からは、“前置詞”や“副詞”の “up”を動詞として使うようなことは避けるべきだと考えるからです。中途半端な“カタカナ語”が、英語学習の妨げになっていることは容易に想像出来ることです。

 

(2)特集の最初の記事は、和泉 伸一(上智大)「SLAの視点から見た『定着』の意味」です。冒頭の記事にふさわしいもので、SLA(第二言語習得論)の視点からの“定着”の問題点を分かりやすく説いていると思います。ただし、SLA (第二言語習得論)と言っても、母語の違いや指導法の違いを考慮に入れなくてはならないでしょう。簡単に言えば、英国人がドイツ語を習う場合と、日本人が英語を習う場合は大きな違いがあるということを意識すべきなのです。

 

(3)この記事では、そういう配慮もなされているとは思いますが、「(feet をfoots にしてしまう現象)だけに限らず、(文法規則を拡大して当てはめてしまう間違いは)文法形態でも確認されている」(p.11 左欄)という記述は不適切な言い方です。“feet” を “foots” とするのは、“文法形態”ではないということになるからです。上げ足を取るようですが、言葉の使い方を論じる以上は正確を期したいと思います。

 

(4)根岸 雅史(東京外語大)「『定着』の測り方――いつ、何を測るか」は、テスティングの専門家が書いているので説得力があります。執筆者はかねてから、教えた直後にテストを行うのではなく、しばらくしてから行うテストを“時間差テスト”と呼んで実行を奨励していますが、定着を図るためにも大事なことだと賛同します。

 

(5)井口 実千代・鈴木 卓(東京工業大附属科学技術高校)「『英語で授業』で生徒の運用力は定着したか―科学技術高校での実践」は、興味あるテーマで、結論を早く知りたいと思う読者は少なくないでしょう。記事にも、「『英語で授業』の効果」が述べられていて、「この1年の取り組みで、英語での問いかけや指示に対する反応は格段とよくなった」とあります。しかし、私は、それは必ずしも“授業を英語で行ったから”とは言えないと思います。執筆者の結論はかなり楽観的で一般性が弱いように感じます。この学校が、SSH(スーパー・サイエンス・ハイスクール)として実践してきたことだけに、余計にそう感じるのです。

 

(6)会田 裕子(東京都稲城市立稲城第五中)「3年間を通したスパイラルな定着指導―動詞の活用を帯活動で」は、学期ごと、学年ごとの指導計画を立てて、それに基づいて指導している様子はよく分かります。“スパイラル”というのは40年ほど前にも言われたことがあり、私の理解では、「上から見ると同じところをぐるぐる回っているように見えるが、横からみると少しずつ登っている(学習が進んでいる)状態のことでした。執筆者の説明は特にありませんが、この方式の最大の障害は、“時間不足”です。現在の特に公立中学で、十分な指導時間があるとは思えないのです。そういう問題点にも触れて欲しかったと思います。

 

(7)林 幸伸「ライティングで定着の好循環を促す―ディクトクロスを使って」は、“ディクトクロス”の解説はなされていますが、結論的には、「学習内容の定着に最も大切なことは、毎日練習する継続性です」とあって、「それが出来ないから苦労しているのだ」という英語教員の不満が聞こえてくる気がします。“ディクトクロス”とは、「Wajnryb (1990) によって提唱された、「統語処理および文法の意識化、中間言語と目標言語の認知比較を促す(村野井:2006)と効果が期待できる練習法です」とありますが、ここでこんな知識を持ち差す必要性は私にはよく分かりません。統語処理、文法の意識化、中間言語、認知比較など調べるべき用語が多過ぎるからです。

 

(8)西村 秀之・梶ヶ谷 朋恵・阿部 卓(横浜市立南高校附属中学)「教科書を繰り返し使って言語材料の『定着』を図る」については、学期毎の、そして年間の授業計画を作成し、それに基づいて授業を実践している様子は分かります。しかし、一般の中学校では“同じ教科書を繰り返し使う”だけの時間が取れない悩みが大きいのではないでしょうか?

 

(9)磯 達夫(東京電機大)「Multi-Word Units の『定着』」では、まず Multi-Word Units の説明があって、指導上は、「単語をまとまりとして意識させることが重要」と述べています。それは分かるとしても、「 fit as a fiddle(とても元気で)や few and far between (きわめて稀な)などは、発音練習を通して定着をはかりましょう」とありますが、生徒が「どうしてそんな意味になるのですか」と質問したら、どう応対すべきでしょうか?予習の段階で、辞書指導までしておく必要性があると思いますし、“どの程度の学習者を想定してなのか”を最初に述べて欲しかったと思います。

 

(10)植野 由希恵(埼玉県戸田市立戸田中学)「発達障害と向き合う授業での『定着』」は、タイトル通りに、発達障害のある生徒たちを指導する場合の注意を述べたものです。大事な問題とは思いますが、別の号の特集記事にしてはどうでしょうか?特に英語教員を目指す大学生や経験の少ない英語教員には未知なことが多い事柄ですから、“定着の問題点”で一緒に論じるには大きすぎるテーマではないでしょおうか?

 

(11)村越 亮治(神奈川県立国際言語文化アカデミア)「CAN-DO リストで定着を実現する」は、指導方法の問題です。ただし、執筆者も指摘している通り、“CAN-DO リスト”は文字通り、生徒が出来ることを前提に作られているはずですから、指導上必要な前提条件でしょうが、それほど確定的な指導資料になっているとは私には思えません。うまくいっている実践例ばかりでなく、失敗例を挙げて貰えば、問題点が更にはっきりしたと思います。

 

(12)特集の第2は、TOEIC テストのねらいと受験記からなっていますが、受験しようと思っている読者には参考になるでしょう。余談ですが、どのラジオ番組だったか忘れましたが、「英語の成績を重視する会社の姿勢」を話し合っていました。社内では日本語を使い、海外の出張所も支社もない会社がどうして英語を重視するのか」というわけです。「単に“かっこういい”と思っているだけではないか」「“将来役に立つ”と言ったって、学校で習った英語など使う機会が無ければ、すぐに錆ついてしまうだろう」といった意見が記憶に残っています。

 

(13)今回の特集では、定期テストに関する連載記事や、「ユニバーサルデザインの外国語活動へ」といったリレー連載があったりして、特集の焦点がボケて見える感じがしました。それと、ここ数年で、学校制度がかなり急激に変化しているようですので、近いうちの特集では、“学校制度の変遷”といった企画をしてもらえると有難いと思いました。(この回終り)

浅野式現代でたらめ用語辞典(再開その33)(過払い金)

Posted on 2014年5月2日

借金をして法定利息以上の利息を払ったような場合は、資格のある会計事務所などが計算をして、払い過ぎた利息を返金してくれると宣伝していますが、庶民の間では・・・・

 

耳の遠い、知ったかぶり老人:何?“かっぱらい”か。そりゃ立派な犯罪じゃよ。違う?借金がゼロになるのか?そんな美味い話に乗るやつもいるのか。

 

中学生ギャル:うちの母ちゃんって、父ちゃんに内緒で借金しているんだ。と言っても、何時も行くスーパーで月末払いにしてもらっているだけだけど。でも、借金がゼロになってお金が戻ってくるかも知れないって、喜んでいる。また今晩夫婦喧嘩が始まるよ。あたしは知ーらない。

 

真面目女子大生:テレビで盛んに宣伝するくらいですから、借金をする人が多いんですね。自由主義経済は競争が原則ですから仕方がないですけれど、他人の借金で儲ける人がいるというのも世の中の皮肉でしょうか。私は大学で経済学を学んでいますが、教科書に書いてあることと現実のギャップに悩んでいます。(この回終り)