言語情報ブログ 語学教育を考える

浅野式辞典:「さんみいったい」(三位一体)

Posted on 2006年8月16日

もともとは聖書の中の神聖なことばだが、日本では俗なことに使われる。受験参考書では、「英文解釈」「英作文」「英文法」を一冊で学べることを謳うものを言うが、多くの受験生はかえって混乱してしまう。そういう効果を狙って、小泉内閣が地方を騙そうと使用した用語。学力不足の大学生は、ゴルフの「3位タイ」とよく間違える。(浅野 博)

★★浅野式「でたらめ現代用語辞典」Asano’s Japanese Dictionary of Current Words and Phrases Flippantly Defined in Disorderly Order★★

浅野:英語教育批評:日本人の発音のこと

Posted on 2006年8月8日

 戦後しばらくは、PTA を「ピー・チー・エー」と言ったり、野球放送でも「バッチング 」と言ったりしていた。現在では「ティ」の音はかなりの人が出せる。しかし、/ f / と / v / や、/ l / と/ r / の発音や聞き分けはほとんどできない。日本語の場合はそれで困らないわけだが、「ロード・オブ・ザ・リング」などと書かれるとさっぱり分からない。なぜ意味も分からないこんな表記がまかり通るのであろうか。
日本語の発音指導のことを知りたくて、斉藤純男『日本語音声学入門[改訂版]』(三省堂、2006)を読んでみた。日本人にはなじみのない音として、「放出音」「入破音」などが解説されていて、音声教育とはあまり関係がないと思った。教師には音声学も素養としては必要だが、大切なのはどう指導するかである。
英語教育でも「発音」を教えることと、「音声学」を教えることを勘違いすることがある。牧野武彦『日本人のための英語音声学レッスン』(大修館書店、2005)などもりっぱな「音声学」の解説書だ。
一方、英語教師の中には、「不定冠詞の a は、母音の前ではなぜ an になるのか」という生徒の問いにも答えられず、an apple を「アン・アプル」と発音する者がいる。国語教師でも、留学生がよくする「『五十音図』とは何か」「経済は“ケイザイ”か“ケーザイ”か」という問いにうまく回答できるかあやしい。そういう教師に必要なのは、専門用語を多用した「音声学」ではなく、「日本人のための発音レッスン」ではないかと思う。(浅野 博)

浅野式辞典:「ろっぽんぎひるず」(六本木ヒルズ)

Posted on 2006年8月4日

六本木(ろっぽんぎ)という田んぼに棲むヒル。「ヒルズ」は英語式の複数形。ただし、このヒル族は、血を吸うのでなく、他の会社の「株」を吸い取る。
(浅野 博)

★★浅野式「でたらめ現代用語辞典」Asano’s Japanese Dictionary of Current Words and Phrases Flippantly Defined in Disorderly Order★★

浅野式辞典:「しょうにんかんもん」(証人喚問)

Posted on 2006年8月2日

 「かんもん」は英語の「Come on!(カモン!)」が語源で、勢いよく呼び出してはみたが、「刑事訴追の恐れがありますので、発言は控えさせていただきます」の一言でなにも聞き出せないのが普通。警察に捕まるかもしれない“商人”が、警察を盾に答弁を逃れるという茶番劇。
(浅野 博)

★★浅野式「でたらめ現代用語辞典」Asano’s Japanese Dictionary of Current Words and Phrases Flippantly Defined in Disorderly Order★★

浅野:英語教育批評:英語教育と日本語のこと

Posted on 2006年8月2日

 学校教育では英語ばかりでなく、日本語の力もつけなければならないとされている。これは多くの英語教師や国語教師にとってやさしいことではない。まず英語教師はどれだけ日本語を知っているかを反省したい。しかも、「知っていることと教えることは別のこと」と言われるから、知っているだけでは十分でない。 
 例えば、「of course =もちろん、と考えてはいけない」と生徒に注意する。確かに英語と日本語を1対1で覚えるのは危険だが、“of course” と同じように、「もちろん」をどういう場合にどう使うのか、きちんと教えられるだろうか。
 7月25日の NHK の「気になることば」では、「なるほど」を取り上げていた。「なるほど」を目上の人に使うことに抵抗を感じるという投書を紹介し、「なるほどですね」と言う人もいるがこれはどうであろうかとか、いろいろ問題点を指摘していた。日常の日本語にも「気になることば」はたくさんある。書物では、定延利之『日本語不思議図鑑』(大修館書店、2006)が、さらに微妙な相違に触れていて面白い。
 「英語教育」誌(大修館書店)は、たまに「英語力と国語力をともに育てるには」(5月号)といった特集をするだけでなく、英語の語法にくわしい Question Box があるのだから、毎号に「日本語質問箱」も設けて、英語教師を啓蒙してもらえると有難い。ある程度日本語についての批判力がないと、東照二『歴代首相の言語力を診断する』(研究社、2006)などを読んでもよく分からないことになろう。
(浅野 博)