言語情報ブログ 語学教育を考える

2.成績トップ・グループ

Posted on 2011年2月25日

今回は読解力中心の調査であった。読解力順位上位国・地域は次の通り。
1位 上海
2位 韓国
3位 フィンランド
4位 香港
5位 シンガポール
6位 カナダ
7位 ニュージーランド
8位 日本

人口の小さな地域はたいへん改革がやりやすい。それを除くと日本は完全にトップクラスだ。大きな国は改革が難しく,なかなかトップ・グループに出ることはできない。
アメリカ(17位),ドイツ(20位),フランス(22位),
イギリス(25位),ロシア(43位)である。
中国は準備がまだ整わない,として不参加。上海や香港のように教育熱が異常に高く,地域が一様であれば,上位になるのはわかっていたことであろう。

韓国とフィンランドはどちらもトップだが,傾向がまったく異なる。韓国はもともと「学歴社会」で,受験競争が激しく,テストに向かってガリ勉をする。一流大学を出ればやがて待遇が3倍,4倍と言われる。国の政策もトップダウン式で,大統領の国家戦略にそって,いち早くPISA型教育を実施に移し,小学校1年生から大学入試まですべてをPISA型にしてしまった。

一方フィンランドは,ヨーロッパのほかの国々と同じく,極力PISAテストの対策はしない,国を挙げての学力テストは少なくする方向を取った。PISA調査の結果も教育方針の参考にする程度で,大騒ぎはなかった。フィンランドがトップになったのは,それよりずっと早くに行われた教育改革の当然の結果であった。

日本の場合は,また違っている。韓国のように,子供の教育のためなら親の生活は犠牲にする,トップダウンで有無を言わせず教育政策を押しつける,これはできない。以下詳しく見てみたい。
(村田 年)

浅野:英語教育批評:「ライティング指導の実態」を考える

Posted on 2011年2月24日

(1)去る2月19日に、関東甲信越英語教育学会の月例研究会(於お茶の水女子大附属高校)が開かれたので、参加した。発表者は千葉県香取市立小見川中学校の田畑光義先生で、2時間にわたって、中学生のライティング指導の実例を報告されたので、ここに紹介させて頂くことにした。

(2)最近の英語指導は、文科省の意向を反映して、「コミュニケーション→音声英語→話すこと→英会話」といった傾向が強い。田畑氏も、ライティングに関するテーマで発表しようとすると、周囲から「なぜ今ライティングなのか。音声指導のテーマのほうが望ましい」と批判されたとのこと。しかし、氏はそういう声に惑わされることなく、3年間を見通したライティングの目標を立てて、実践されてきた。そして、学習者の成長を知る方法としても、「書いたもの」を記録して活用することが有効と述べている。

(3)学習者が自分の音声や教材を録音したテープを持ちかえることが可能になったのは、1960年代後半になってからである。その後、携帯電話やゲーム機の普及は目覚ましいが、教育面での応用はあまり進んでいない。、生徒の手書きの作文をコピーによって記録したり、配布したりして利用するのは、現在でも確かに有効なことと思う。生徒の改善すべきところを示して、考えさせるといったことがやりやすいのである。

(4)田畑氏の話は、小学校で習うローマ字を中学1年生がどの程度書けるかを調査したり、有名人の紹介カードを利用して指導したりしているいる様子が具体的にわかる発表だったが、中心的方法は、「Can-Do リスト」の活用であった。”Can-Do リスト” とは文字通り、“できること”のリストで、それを読みながら生徒は応用して、自分のことを書いていく。次の例は、3年生が授業中に書いた英文である。

例:I want to be a basketball player. I have three reasons. First, I like basketballl. For example, it it interesting for me to shoot a ball. Second, I think basketball player is very cool. When I went to be basketball game. Isaw many wonderful performance. So, I want to play height level basketball. I think it is very excitement. I want to be a basketball player.

(5)私の推測では、この作品は、中の下か下の上に属すると思われる。細部の誤りを別とすれば、まず結論的な文があり、その理由を順次述べていくなど、“表現の型”と言えるものが出来ている。スピーキングの指導だけでは、こういう点の指導はなかなか徹底しないであろう。称賛に値する作品例だと思う。

(6)批判的なことを1つだけ言わせてもらう。私の持論に、“熱心な教師はあぶない”というのがある。田畑氏にも、多少そういう傾向がある。熱心で、親切で、欲張り過ぎるのである。発表にもそういう点が見られて、例えば、生徒の答案を回覧されると、参加者は資料は見たい、話しも聞きたいということになって、落ち着かない。そういう点にも少し配慮してもらいたいという気がした。(浅 野 博)

新しい「国際学力調査」(PISA)を読む

Posted on 2011年2月22日

1.学力は改善傾向か?
12月7日に「国際学力調査(PISA)」2009の結果が全世界で発表され,8日の各紙はそれぞれ詳細に報告した。読売,朝日,毎日,東京,日経,産経を見たが,かなり楽観論が目立った。

「15歳 読解力改善」
「学力上向き 文科省ホッ」
「現場,指導改善進む」
「改善が見られてよかった」(文科省幹部),
「学力は改善傾向,自治体や学校現場が努力した結果」
「読解力を中心にわが国の生徒の学力は改善傾向にある」(高木文部科学相),
「学力低下歯止め」
「「学校で読書」効果」

世界65の国・地域から47万人の15歳の生徒が受験した結果,日本はいずれの分野においても順位が上がった。
読解力      15位→ 8位, 
数学的リテラシー 10位→ 9位
科学的リテラシー 6位→ 5位である。
(村田 年)

浅野:英語教育批評:「リメディアル教育」再考

Posted on 2011年2月16日

(1)前回のブログで、「私が訪問したクラスは、生徒の多くが知的障害のある子どもたちで…」と書いたところ、私的なメールで、「知的障害ではない場合」について質問があった。一般性のある問題だと思うので、ここでお答えし、補足させてもらうことにしたい。

(2)現在、日本では、「知的障害[者]」という用語が定着しているが、かつては差別的な用語が用いられて、対策も十分ではなかったと思う(こういう用語は時代によって変化するので注意が必要)。英語では、”mental deficiency” などと言うが、主に脳に病気があったり、外傷を受けて正常に機能しなかったりすることらしい。

(3)私がアメリカの現地で聞いた範囲では、脳の病気や外傷といった原因以外には、「両親が離婚して、親権の争いがあったりすると、生活環境の変化から精神的に影響を受けて、親や先生の言うことをきかないとか、勉強をしないといったことになる」とのことだった。当時“いじめ”(bullying) という用語は使っていなかったが、普通のクラスの生徒が、リメディアル・クラスの生徒たちに偏見をもたないように、先生方は十分に配慮していたように感じられた。そして、リメディアル・クラスの生徒が、その数は年によって違いがあるが、徐々に自信を持つようになり、普通クラスに編入されることもあるとのことだった。

「英語教育」(大修館書店)2011年3月号の特集について
(1)この号の特集は「英語教師のやっておいて良かったこと・やっておけば良かったこと」であるが、「定年退職をした教員ならば、書きたいことは沢山あるだろう」と私は思った。しかし、編集部の意向は、この号の表紙に書いてあることを読むと、“勤務校を変わって”とか、“小学校英語に取り組んだ経験から”といった節々での変わり目を想定しているようである。

(2)後輩教員への“忠告集”ならば、“懺悔録”(表紙の解説の中の用語)なんかよりも、「こうしたほうが良いよ」「この問題はこう考えるべきだ」といった積極性のある助言のほうが感じが良くて、有益であろうと思う。特集記事の執筆者は、大学3名、中学4名、高校1名、中高1名、退職者1名の12名である。したがって、記事の内容はほとんど“忠告集”である。

(3)後輩への忠告もたやすいことではない。経験のほとんどない教員や教員希望者は、「こうすべきだ」という一般論を鵜呑みにしがちである。例えば、「英語力をつけよ」というのは必要な忠告だが、それで、“立派な英語教師”が生まれるわけではない。中には自分の勉強に夢中になって、教えることを忘れてしまう教師もいるが、教師には“授業[実践]力”も要求されるのである。だとしたら、今回の特集は、「英語教師の“英語力”と“授業力”」とでもしたほうが、執筆者にも読者にも分かりやすかったのではないか、と愚考する次第である。(浅 野 博)

【私の記事に対するコメントは原則非公開扱いとさせていただきます】

浅野式辞典:「カラ(KARA)騒ぎ」

Posted on 2011年1月29日

 韓国の人気グループKARA が解散するの、しないので、芸能レポーターや民放の芸能番組はそれこそ大騒ぎ。そこで視聴者の声を聞いてみると:
知ったかぶり:シェークスピアの有名な劇だよね。悲劇だったかな。“さんま”がやっていたから、喜劇だな。
野党議員:民主党のマニフェストのことだね。約束はするけど、実際は“カラ手形”ばかりだ。
高校生ギャル:あれカッコイイよ。頭は私みたいに空っぽに見えるけどさ。