言語情報ブログ 語学教育を考える

2.海外の辞書学会との交流(1997-8年)

Posted on 2010年4月24日

1997年8月に国立国語研究所が大きな国際シンポジウム「言語研究と世界のシソーラス」を開催することになり,ヨーロッパ辞書学会のハートマン博士,マッカーサー博士が主任講師として招聘された。よい機会なので許可を得て,われわれも講演会,シンポジウムを開かせていただいた。
講演会もシンポジウムも100名を超える参加者を得て成功であった。また,ハートマン氏をJACET大会まで引きとめておくホテル代のカンパをしたら,十分すぎるほどの献金があった。おかげでヨーロッパ辞書学会と強い結びつきができた。

★頼まれれば越後から餅つきに。欧米の学者も頼めば 想像以上のことをしてくれます★
(村田 年)

1.創立の小集会からシンポジウムへ(1995-6年)

Posted on 2010年4月21日

1995年12月20日に創立の会を持つことにし,JACETの名簿で研究分野を「辞書研究」「辞書指導」としている会員を探した。が,2700名中に4,5名しかいなかった。範囲を「語彙研究」「語彙指導」にまで広げたが,12,3名の名前しか出てこなかった。結局,知り合いも含めて30名ぐらいに手紙やメールを送った。

当日集まったのは6名で,これで出発することにした。会は隔月に開き,ひとりずつ輪番で研究発表することになった。何回か続いたが,出席者が5-15名程度で少なく,どうしたものかと思案した。

★サークルに人を集めるのは難しいもの★

その当時,井上永幸氏が始めてくれた「辞書学メーリング・リスト」は極めて活発で,毎晩みなさんいろいろな語法・辞書に関する問題について意見を交換していた。私もこれを読み,意見を書きこむのがうれしかった。おそらく150名ぐらいが登録していたと思われる。

なんとかこれらの研究者を一堂に集めて話し合う機会が持てないかと思案した。シンポジウムを開くのはどうだろうかと何人かに相談して賛成を得て,研究が活発な関西から2名,関東から1名の講師をお願いすることにした。

最初に依頼した3名,南出氏,井上氏,赤須薫氏が受けてくれたので,スムーズに仕事は進み,1996年12月14日に旺文社の大会議室で開催した。「英語辞書編集の今日的課題」と題して,66名もの参加者を得て,英和辞典の編者として有名な先生方も参加されて,活発な議論が3時間を超えて続き,成功であった。

★アイディアはダメでもともと。やってみることです★
(村田 年)

浅野式辞典:「ついこん」(つい婚)

Posted on 2010年4月19日

 ツイッターがはやり出したと思ったら、それで知り合った同士が結婚するのが「つい婚」だそうで、出会い系サイトのような事件にならないことを祈るばかりだ。高校生ギャルに尋ねてみると;
A:つい結婚しちゃうというのはわかるよ。私なんか「ついやっちゃう」ことばかりでだもんね。
B:40字くらいでおしゃべりして好きになるならいいじゃん。いやになったら離婚も早いほうがいいよ。
C:うらやましい。私の彼氏なんか、1時間ケータイで話しても煮え切らない態度だよ。

英語辞書研究会の創設

Posted on 2010年4月18日

はじめに
これはいわゆる「研究プロジェクト」ではないが,同好の士を募って小さな研究グループを作り,それを発展させて,予想以上の大きな会にした。そのおかげで,辞書関係のみなさんに,発表の機会を,同好の士を見つけてグループを組む機会を提供できた。また,まだ研究分野として認知されてない感のあった辞書研究を辞書学の位置に据えることに多少の力を貸したと思われるので,取り上げることにした。

国際応用言語学会の大会を1999年に東京で開くことが1994年の秋に決まった。世界中から2500名以上もの研究者を集めて,応用言語学のあらゆる分野の研究発表がなされる。これはいい機会だ。自分が少しばかり関係している辞書研究についてもシンポジウムの1つぐらい出したいと思った。

★受け身で参加するのではなく,自分たちも発表したい★

1995年夏に学生をつれてメルボルンのモナッシュ大学へ行き,そこでちょうど開かれた小さな「社会言語学研究会」に出席する機会を得た。出席者は20名ほどで,ほぼ輪番で発表するもので,その発表は,まだ中途段階のものでも,つかんだばかりのアイディアを研究仲間にぶつけるといったものでもいいというラフな規定のようであった。

これがヒントになって,全員参加型のInterest Group(同好の士の研究グループ) を作ればいいんだと思った。南出康世氏に相談したら「英語辞書学の理論的な研究とともに辞書編集の実際的な課題の両方を扱う会」がいいとの助言をいただいた。

★こちらに問題意識があれば,見るもの,聞くものが ヒントになるもの★
(村田 年)

浅野:英語教育批評:「英語教員と研究」のこと

Posted on 2010年4月16日

(1)「英語教育」(大修館書店)の2010年5月号は、「英語教育・リサーチのすすめ」を特集している。そのテーマとしては、「多読の導入で生徒の英語力が伸びたかをアクション・リサーチで調べたい」、「シャドウイングの導入でリスニングの能力が伸びるかどうかを調べたい」、「小学校から英語を始めた生徒の中学以降の英語力を調べたい」など7編がある。
(2)「すすめ」なのだから当然だが、そうしたリサーチをするための方法が述べられている。しかし、私などは、へそ曲がりなのか、「その前に考えることがあるだろう」と思ってしまう。現在の小、中、高の教員は、研究のためには恵まれた状況にあるとは言えないであろう。私が会える現役の先生方は、「前よりも忙しくなった」と言う人が多い。軽視できない傾向だと思う。
(3)私が国立大学の附属中学校から大学へ転出したのは40年以上も昔だが、大学は研究のためにはずいぶん恵まれていると痛感した記憶がある。しかし、当時の国立大の附属校は結構恵まれていて、週に1日の研究日があり、研究費を出してくれるところもあった。その日には、図書館へ行ったり、他の地区の研究会に参加したりすることができた。研究のためにはそうした余裕が必要なのである。現在では、研究日などを要求すると、「担任が不在のときに事件が起こったらどうするのか」といったことを校や指導主事から言われるであろう。
(4)本号の「英語教育時評」は卯城祐司氏(筑波大学)の担当で、「フィンランド・メソッド」について書いているが、日本人がフィンランドではそういう教育が一斉に行われているという印象を持ちがちなのを戒めている。フィンランドの生徒は必ずしも英語を話すのはうまくないこと、学力が高いのは若い教育大臣による制度改革が功を奏ししていることなどの指摘がある。
(5)また、次のようにも述べてある。
「最近、綬業を見させていただくと、どうも『○○インプット』や『音読○○』など、誰かのコピー活動ではと思うことが多い。新しい情報や指導法は一度整理し、活用する場合は自分たちの文化や教室に合うように租借していきたい」(p. 41)
この号の特集も、こういうことを前提にして読むべきであろう。先行研究から容易に推測できるようなリサーチに時間と労力をかけて、肝心な「自分の生徒を知ること」がおろそかになるような愚は避けなければならない。(浅 野 博)

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