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やはり、直訳では不充分

Posted on 2010年11月9日

 何度かタイトルについて言及したことがありますけれども、(16)People in Atlanta know the width of the airport.を、「Atlantaの人々は、そこの空港の広さを知っている。」では、英文ばかりでなく、直訳された和文も両義的なままなのです。
 定石と申しましょうか、両義性に係わる箇所を特定することにしますと、width「広さ」に辿り着くことでしょう。widthの形容詞形wideが、「広い」から、まず、Aの解釈はできることでしょう。
 A: Atlantaの人々はそこの空港が広大なことを知っている。
「広い」と「広大な」が結びつくことは容易にわかることでしょう。
 さて、問題は、もうひとつの解釈です。中立と言いますか、単位には、否定的ではない、肯定的な方が、使われる点に注目しましょう。「小ささ」ではなく、「大きさ」、「短さ」ではなく、「長さ」、のようにです。ならば、wideやwidthには、「狭い」や「狭さ」ではなく、「広い」や「広さ」が該当し、widthが直訳して「広さ」では依然として両義的なので、単位に徹して、widthに「面積」を当てることで解決しそうで、Bの解釈に辿り着くことができます。
B: Atlantaの人々はそこの空港の面積を知っている。
Bの解釈は、Aが広大な空港にのみ該当するのに対して、広大でなくとも空港であれば、可能なのです。実は、Chicagoに次いで、Atlantaは空港が広大なことで知られていますけれども。
 次回は、(17)に取り組みましょう、poorの解釈もポイントではありますが。
(17)The poor boy broke a carton of bottles.

昔、食べる人、今、作る人?

Posted on 2010年11月1日

今回は、(15)Mark cooked a meal for his wife.で、「君、作る人、僕、食べる人」というCMが30年以上前になったと思われたりしませんかと、書きましたが、1970年代半ばに、授業中や剣道の試合観戦中に耳にしたことを、今でも覚えている次第です。
(15)Mark cooked a meal for his wife.において、両義性に係わる箇所が特定できれば、この両義性は難しくはないのですが、すぐにわかる一方に対して、他方がすぐにはわからず、辞書を引いてわかるというようなことは、有り得るでしょう。
では、(15)Mark cooked a meal for his wife.で、両義性に係わる箇所は、どこでしょうか。両義性に関連するということは、両義性に関連しそうもないものを、消去すると残るでしょうから、それが前置詞forだとは、何とか辿り着けるのではないでしょうか。更に、すぐにわかる一方とは、次のAでしょう。
A: Markは奥さんのために食事を作った。
前置詞forと言えば、第一義的に、「~のために」の意味というのは、わかり易いですね。
 さて、他方は、如何でしょう。おわかり難ければ、辞書のお世話になるとして、ほぼ第二義的に、前置詞forが、「~に代わって」と何となくはわかり、次のBのように解釈されるでしょうか。
B: Markは奥さんに代わって食事を作った。
Aにしても、Bにしても、「君、作る人、僕、食べる人」ではなく、その逆の「僕、作る人、君、食べる人」になっています、30年以上の時の経過でしょうか。ただし、「僕、作る人、君、食べる人」がよりはっきりしているのは、Aの方で、Bの方が、「僕、作る人」であっても、必ずしも、「君、食べる人」とは限らないという、傾向はあるにはありますね。
 次回は、次の(16)で、日本語に直訳しただけでは、依然両義性が詳らかにならないままで、それもあって両義的箇所の特定が重要でしょう。
(16)People in Atlanta know the width of the airport.

一字違いの両義性

Posted on 2010年10月26日

  (14)The boss had his bag stolen.の両義性を。最も劇的と申し上げましたのは、結果的に一字違いになるからです。
 まず、 (14)The boss had his bag stolen.の両義性に係わるのは、have + 目的語 + 過去分詞という構文に隠されています。have + 目的語 + 過去分詞という構文は、広義の「使役」を表し、更に、<受身用法>と狭義の<使役用法>があり、これらの用法が、両義性に反映されます。
 次に、両用法を見ていきましょう。<受身用法>は、広義の「使役」と言っても、話者から見れば、不可抗力であったりしまして、発音上、過去分詞が強く発音され、~れるという意味になります。逆に、狭義の<使役>は、文字通り、話者が使役を促しまして、発音上、haveの方が強く発音され、~せるという意味に対応するのです。
 以上から、<受身用法>が、Aの解釈で、狭義の<使役>が、Bの解釈になります。
A: 上司は、自分のかばんを、盗まれた。
B: 上司は、自分のかばんを、盗ませた。
Bの方が、考え難いのでしょうが、ある映画を見ておりましたら、ホテルにイチャモンをつけるのに、クロ―クに預けたかばんを盗ませる場面があるではありませんか。
 次回は、次の(15)で、「君、作る人、僕、食べる人」というCMが30年以上前になったと思われたりしませんか。
(15)Mark cooked a meal for his wife.

名詞・不定詞連続の両義性

Posted on 2010年10月19日

(13)The statesman has plans to leave.において、plansという名詞とto leaveという不定詞の連続に、両義性が秘められています。名詞plansは、「計画」なり、「案」なり、よく用いられる意味です。
やや複雑なのが、不定詞to leave中の動詞leaveの意味で、(1)Flying planes can be dangerous.が、A:飛んでいる[自動詞]飛行機は、危険性があると、B:飛行機を飛ばす[他動詞]ことは、危険性があるとが、思い出されるように、leaveも自動詞と他動詞の両方が、よく用いられます。まず、自動詞で代表的なのが、「出発する」転じて「立ち去る」の意味で、例えば、They left Japan for Korea.「彼(女)らは、韓国に向かい、日本を立ち去った」等々です。そして、代表的な他動詞の意味が、「残す」で、やはり例えば、The politician left no plan.「その政治屋は、何ら案件を残さなかった」等々が、考えられるでしょう。
以上から、(13)The statesman has plans to leave.は、次のように、両義的に解釈されます。
A:その政治家は立ち去るつもりである。
B:その政治家には残しておくべき案がある。
お時間がおありでしたら、politician「政治屋」とstatesman「政治家」との相違もお考え下さい。
 次回は、次の(14)で、この両義性は、最も劇的です。
(14)The boss had his bag stolen.

(12)のもう一つの解釈は、B<近未来>と考えられます。
B: Josephは学位論文を書くことになる。<近未来>
  現在分詞が使われる進行形に、A<進行>ばかりでなくB<近未来>の解釈もあることは、すぐにご理解できますでしょうか。現在分詞の進行形に『未完了』という意味が通低していると考えますと、B<近未来>もA<進行>と同類と理解し易いでしょう。では、過去分詞の完了形に通低するのはどんな意味『?』でしょうか、稿を改めなければなりません。
  次回は、次の(13)で、両義性に構文が関連することを、念頭にお考え下さい。
(13)The statesman has plans to leave.

進行形も両義的

Posted on 2010年10月12日

  (12)Joseph is writing a dissertation.において、(現在)進行形が両義的です。まず、進行形の名前の通り、現在分詞~ing習得率の高さからも、Aの<進行>は、比較的容易に解釈可能ではないでしょうか。
A: Josephは学位論文を書いている。<進行>
  これに対して、もう一つの解釈も、容易にお分かりでしょうか。もう一つの解釈であるBを考える上で、次のXとYを考えてみましょう。
X: It will rain this afternoon.
Y: It is raining this afternoon.
Xは、未来形で、予定は未定でもないのでしょうけども、今日の午後に、雨でも雨でなくとも差し支えなく、「今日の午後、雨が降るでしょう。」と解釈されますけど、Yは、未来のことにも拘わらず、現在進行形が用いられ、今日の午後に、雨で当然で、雨でないと具合が宜しくなくて、「今日の午後、雨が降ることになります。」と、雨の蓋然性が高いということが含意されます。Xが<未来>なら、Yは<近未来>です。(12)のもう一つの解釈は、B<近未来>と考えられます。
B: Josephは学位論文を書くことになる。<近未来>
  現在分詞が使われる進行形に、A<進行>ばかりでなくB<近未来>の解釈もあることは、すぐにご理解できますでしょうか。現在分詞の進行形に『未完了』という意味が通低していると考えますと、B<近未来>もA<進行>と同類と理解し易いでしょう。では、過去分詞の完了形に通低するのはどんな意味『?』でしょうか、稿を改めなければなりません。
  次回は、次の(13)で、両義性に構文が関連することを、念頭にお考え下さい。
(13)The statesman has plans to leave.